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 Mr.10ペアの下にはMr.11、12ペアが居たが、そこが繰り上がるのか、誰かがMr.10の穴埋めに引き抜かれるのかは分からない。が、いずれにしても次にナンバーエージェントに選ばれるのは、オフィサーエージェントの部下として在籍する200人の“ビリオンズ”である。
 フロンティアエージェント――Mr.6ペア以下――の部下と云う位置にあるミリオンズは、階級的にはビリオンズの下になる。つまり、余程の功績を残さない限り“飛び級”は有り得なかった。
「あー、そうだったか……」
 バロックワークスの組織図を思い出し、Mr.9ペアはがっくりと肩を落とした。
「ミス・ロビンが昇格したってアンタ達に何も得はありゃしないってのに、何でそんなに残念がる? それより、自分達の心配をした方がいいんじゃないかい。Mr.10ペアの次はアンタらかもしれないんだからさ」
 ミス・マンデーが呆れたように息を吐くと、二人は「何ィ!?」と目を剥いた。
「ちょっと! 次にクビになるのは私達とでも云いたいの!?」
「聞き捨てならんなァ、ミス・マンデー! 我が社が誇る優秀熱血ペアに何を云ってくれる!?」
 “優秀熱血ペア”の二人とミス・マンデーは少々仲が悪いのか、こうしていがみ合う場面が多く見られた。が、大体Mr.8が上手く三人を諫める為、大きく仲間割れ――“仲間”と云う概念がこの会社にあるかどうかは別だが――する事は無かった。
 今回もそのようで、Mr.8は咳払いを何度かしながら、三人に声をかけようとした。が、それは戸を強く叩く音に遮られてしまった。
「何だ?」
 Mr.8が立ち上がり、ドアを開けると、一人の社員が息を切らし、慌てた様子で立っていた。
「た、たたっ大変だ!」
「どうしたんだ。また我が社の船が襲撃を受けたとでも云うのか?」
 社員が勢い良く首を振る。
「み、み、ミス・オールサンデーが! 副社長専用のカメが入り江に着いたと見張りから……!」
 一瞬、時間が止まった。
「何ィィィィィィィィッ!!!?」
 Mr.8だけでなく、小屋に居た全員が同じ驚愕の声を上げた。
「なっ、何しにアイツが来るんだよッ!?」
「こんな所にアイツが来るって事は、余程の指令か何かって事じゃないか!」
 冷静で皮肉屋のミス・マンデーでさえ、怖れが含まれた驚きの表情を浮かべ、うろたえている。
 それもその筈、資金稼ぎが主な仕事であるミリオンズが行動する島は、グランドラインの入り口付近が大半で、そんな所に副社長であるミス・オールサンデーが訪れる理由は無いからだ。指令は指令状、または電伝虫で行われるし、何かを届けたりと云う事も直接する事はまず無い。平たく云えば、雑用の居る島に最高司令官が来るか? と云う事である。
 ちなみにナンバーエージェント以外、特にミリオンズ等は彼女に会った事すら無かったりする。
 全員が驚きおののく中、一人だけ別の感情を持つ者が居た。
(姉さん……!?)
 ナセは思わず“その言葉”を云ってしまいそうになり、唇を噛む。
 その傍らで、Mr.8とミス・ウェンズデーが険しい表情で目配せし合っていたが、その事には誰も気付かなかった。

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