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 拠点の小屋ではミス・マンデーがテーブルに連絡書を放り、バカにしたように鼻で笑っていた。
 それを聞いて、Mr.9もフフン、と笑う。
「へェ……おれ達の“下”か。なら仕方が無いかもなァ」
 な! と、ミス・ウェンズデーに聞けば、彼女も大げさに肩をすくめて頷いた。
「フフ、任務を常に遂行出来てこそのエージェントだもの。クビになって当然よ」
 自分達も何度かクジラの肉調達の任務を失敗していたが、そんな事は忘れているかのように云ってのける。
「ミス・ロビンも失敗した事が無いしなァ。ウイスキーピークにはおれ達優秀な社員が揃ってる。クビなんておれ達には無縁の言葉さ……なァ、ミス・ロビン」
 Mr.9の隣で、テーブルの書類に目を通していたミス・ロビンは話を聞いていなかったらしく、え? と首を傾げた。その様子は少し元気が無いように思える。
「ミス・ロビン、どうしたの? 何だか……船襲撃事件から様子がおかしいわ」
 彼女の歳が上でも、妹のように面倒を見ていたミス・ウェンズデーは、その事にいち早く気付いた。
「そう? ……どこもおかしくないから大丈夫。それよりみんな、Mr.10ペアの船が何故この近海にあったのかは気にならないの?」
 ミス・ロビンの答えに、ミス・ウェンズデーは心配そうに眉をひそめるも、彼女もまた疑問に思っていた事で、ウーン……と唸る。
「近くの島に居る事は知っていたけれど、ここを通りかかるって事も無いだろうし」
「何か指令が出ていたのさ、きっと。それ以外考えられない、と云うか、それ以外に何があるって云うんだ? だろう?」
 Mr.9がテーブルに頬杖をつき、「そんな事どうでもいい」とつまらなそうに云った。
 それはそうだったが、その“指令”と云うのが気になるナセは、納得いかない表情を浮かべる。
 ドフラミンゴの部下に襲撃されなければ、彼らは何処に何の目的で向かっていたのだろう。この近海に居たと云う事は、もしかしたらこの島に目的があったのではないか……そして、それは――
「それより、私が気になるのはMr.10らの後釜だがな」
 奥でサックス、もといショットガンを磨いていたMr.8が口を開いた。
 その言葉に、そうだ! とMr.9が笑顔をミス・ロビンに向ける。
「もしかしたらお前がなるかもな、ナンバーエージェントに!」
「わた、し……?」
 キョトン、としているミス・ロビンに、ミス・ウェンズデーが大きく頷いた。
「この間、任務遂行能力の高さをみんなで話していたじゃない? あなたはもっと評価されてもいいくらい。それに、ナンバーエージェントに昇格となれば、長らく決まっていなかったパートナーも決まるだろうし……そうすればもっと大きな任務につける筈よ」
 ミス・ウェンズデーはそう云ったが、ミス・ロビンは困った顔で首を振る。
「多分私じゃないと思う。私はビリオンズですらないもの。ビリオンズはフロンティアエージェントの候補社員なんでしょう? ミリオンズである私がナンバーエージェントに突然なるなんて絶対無いよ。実際、ミス・ウェンズデー達もビリオンズになってからナンバーを与えられて昇格してきたでしょう」

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