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(大きな背中……サーって頑丈な体つきしてるよね。太い首に整えられた黒髪……そして頬の傷。怖い顔つきしてるけど不思議と全然怖くない。今はコート羽織ってないけど、その姿もスマートで好き。でも重そうなコートを羽織って悠々と歩くサーも凄くすてき……!)
 ぼけーっとそんな事を思っていると、ナセは何だか顔が熱くなってくるのを感じた。
「……っ?」
 ドキドキと、高鳴る胸を抑える。それは先日の夜、クロコダイルに後ろから抱き付いた時の心境と似ていた。
 また、クロコダイルもそんなナセの様子に気付かずに、ドキマギとしていた。
(テメェでテメェの罠かけてどうする……でも傍に置いておきてェと思うのは仕方の無ェ事だろうが……!)
 誰に云っているのか、クロコダイルは頭の中でそんな事を叫んでいた。
 今すぐ、柔らかであろう唇を塞いで滑らかな肌に手を這わし、その温もりを貪り食ってしまいたい! と獰猛な雄の部分が叫ぶ。
 しかし、そんな事はしたくない。ナセを哀しませ、傷つける事はしたくないのだ。らしくない心境に以前からクロコダイルも参っていた。
「……眠ィのか、ナセ」
 ふと、黙りこくるナセに気付く。
 クロコダイルは自分を落ち着かせる為に深く葉巻を吸い、吐きながら口を開いた。
「う、ううん。そうじゃないけど」
 ナセは赤い顔を見られたくなくて、慌てたようにそう返す。
「フン……そうか」
 そう笑うと、クロコダイルはベッドから腰を上げ、傍に掛けてあったコートをバサリと羽織った。
「何処か行くの?」
 今、傍に居られると緊張してしまいそうだったが、この嵐に少し恐怖を感じている自分としては、クロコダイルに傍に居て欲しかった。
 そんな複雑な気持ちが表情に表れていたのだろうか、クロコダイルはナセの頭を軽く撫でる。
「少し操舵室へ行って、航海の様子を聞いてくるだけだ。何も知らねェより、どんな状況か聞いた方が楽になる筈だ」
 そう云ってクロコダイルはドアへと向かうが、今外に出れば雨に濡れるのは確実である。
「サー、そのまま外に行ったら濡れちゃう――」
「心配無ェ。待ってろ、ナセ」
 首を振ったクロコダイルはドアノブを回して、ドアを押し開く。
 途端に風と雨が部屋へと吹き込んで、思わずナセは目を瞑ったが、それに構わずクロコダイルは外へと出て行ってしまった。
 風のせいでドアが勢い良く閉まると、ナセはフウ、と息を吐く。
「……どうしちゃったんだろう、私……」
 ナセは再び熱くなる頬を両手で押さえながら、ベッドの上で小さくうずくまった。
 ――サーの傍に居たい。
 その想いが生まれたのは最近の事では無かったが、それは色濃く自分の中で成長しているのを感じる。

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