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「会った奴らには――特にアホミンゴ野郎には何もされてねェだろうな……?」
 すると、ナセはころころと笑う。
「されるって何を? ふふっ、サーも変な事云うんだから」
 あれだけ野郎に囲まれて無防備過ぎるのは、ある意味罪じゃないかとクロコダイルは思う。
 ナセを探して歩き回っている時に、ドフラミンゴの部屋からナセの声が聞こえた時は、怒りやら何やらが混ざり合って気が狂いそうになったのだ。ドアを砂にするくらいで治まったのが奇跡だと思えた。
「……もしかして、心配してくれてるの?」
「あ?」
 とりあえず心を静めようと鉤爪の手入れを始めたクロコダイルは、ふいに掛けられた言葉に片眉を上げて答える。
「あの……ドフラミンゴさんが“ワニ野郎はお前の事気に入ってる”って云ってたから……それって心配もするって事なんじゃないかって思ったり、して……」
 少し照れたように困った表情で話すナセを見つめながら、クロコダイルは、余計な事云いやがって……と顔をしかめた。
 それを見たナセは何故かシュンと俯き、ベッドのシーツを握る。
「ごめんなさい……。でも、屋敷の外には出ていないしそれは守ってるよ。サーが戻る時には部屋で出迎えようと決めてて……それは今日は守れなかったけど……その、サーとの約束を破って……ごめんなさい…………」
 段々声が小さくなり、最後はシドロモドロになったナセは、膝を抱えてうずくまってしまった。
「……」
 そんなナセの様子を、クロコダイルは複雑な思いで見つめる。
 ここへ来て、部屋にずっと居ろと云う方が無理だと思うし、それではまるで軟禁状態である。アラバスタの時も、ミス・オールサンデーと外には出るものの、クロコダイルが外へ連れ出す事はあまりなかった筈だ。
「心配……か」
 ふと自分の左手を見れば、黄金に輝く鉤爪には自分の顔が映っている。
「確かにそうかもしれねェな」
 自嘲のように零した台詞に、ナセが恐る恐る顔を上げた。
「サー……?」
 クロコダイルは、鉤爪に右手をグッと添えると、目を閉じながら深く息を吐き、静かに口を開く。
「お前が約束を破るのは仕方の無ェ事だ。まさかセンゴクや七武海の野郎共に会ってたとは思わなかったがな……だが、それもおれの責任でもあるだろうな」
 連れて来たかったから連れて来た――浅慮ではなかったが、ナセの事をしっかりと考えてやれなかった自分のせいでもあるのだ。
「ナセ、お前が部屋を抜け出した事を責めるつもりは無ェ。だが、ここは変な鳥やら熊やらオヤジがわんさか居る……心配するってのは、その通りだ」
 ナセはクロコダイルの思わぬ言葉に目を丸くする。自分を責める物云いは普段しないし、その言葉には自分への思いやりが含まれている事に気付いたからだ。
「……明日もおれは居ねェが、部屋を出るなとは云わねェ。だが、軽率な行動は避けろ。男にホイホイついていくな、部屋にもなるべく入るんじゃねェ……いいな」

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