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 妙だな、とクロコダイルは思った。
 それは、目の前で広がる円卓による会議が、だ。何となくだが全体的に士気が上がっている気がする。
(七武海がテメェの仕事以外で、政府や海軍の為に張り切る事なんてありゃしねェんだがな……)
 ただの勘違いだろうか、と葉巻をふかしながら、下らない話し合いの場を他人のフリで眺めた。世界の事なんてどうでもいい、自分の計画が無事に終われば、軍事国家の王となり、何にも脅かされない地位に立てるのだから。
「――フン」
 クロコダイルは、いつかは自分にへりくだるようになるであろう人間共を一瞥すると、軽く鼻で笑った。凝り固まった肩に右手を当て、今日は早く部屋に戻れるようにと願ってみる。
 最近はセンゴクらとの会議の他、世界政府の人間共との会議や報告会やら、とにかく面倒臭くて仕方が無い時間ばかりで、部屋に戻ってもナセはもう眠りについていたりする。少し話せば、退屈はしていないようだったが、なるべくなら自分が傍に居てやった方がいいと思うし、居てやりたいと思ってしまうから、クロコダイルの機嫌は常に悪かった。



「おい待て! ドフラミンゴ、話はまだ終わっていないぞ!!」
 開け放たれたドアから、センゴクの声が飛んでくる。
 ドフラミンゴはペタペタと廊下を歩きながら耳を小指で穿り、ニヤニヤと笑った。
「フッフッフ!! 今日はこれでお終いにしようぜ、センゴク! いくら話しても埒が明かねェんだからよ!」
 会議室の方へそう叫ぶと、盛大な溜め息が聞こえた。
「クロコダイル、残ってくれ。まだ片付いておらん問題がある」
「あァ!? またおれが残るってェのか……!?」
 そんなやり取りが聞こえるが、もう自分は知った事ではない。
「哀れだぜェ、ワニ野郎」
 アーメンとか何とか唱えつつ自室の前まで来ると、少し先の廊下から何か小さいモノが近付いてくる。
「あ!」
「……アン?」
 自分の姿を見た途端、“それ”は嬉しそうな声を上げてパタパタと走って来る。
「――小娘?」
 “それ”はドフラミンゴからすると、とても小さな娘だった。
「あなた、七武海の人でしょう!? ドンキホーテ・ドフラミンゴさん!」
 当たった? と小首を傾げた姿に、ドフラミンゴは何か思い当たったのか口角を上げる。
「あァ正解だ、お嬢ちゃん。んでお前はワニ野郎のツレだろう」
 足元の栗色の頭をわしわしと撫でると、娘はにっこりと微笑んだ。

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