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 すぐにシャワーの音が聞こえてきて、ナセは無意識に微笑んでいた。
 アラバスタに居た時よりもずっと一緒に居れて、こうして生活の一部を共有出来ている。その事がナセにはとても嬉しい事だった。
 何故そう思うのか、そんな事はどうでもいい。
(――だって、そう思うんだから……それでいいんだ)
 自問自答に肩をすくめると、本に集中を戻す。そして、クロコダイルが出てくるのを待つのだった。



 しばらくして、クロコダイルがシャワールームから出て来た。ものの数分だったが、疲労困憊の様子で出てくる事に気付いて、ナセは思わず本を放り投げそうになった。
「どうしたの!? とっても疲れてるみたいだけど……」
 クロコダイルはそれには答えず、フラフラとナセの隣へ沈み込む。
「……っ」
 濡れて乱れた髪が色っぽく、ナセは風呂上がりのクロコダイルに見とれていた。バスローブこそ着ているが、こんな風に露出して気を緩めている彼を、ナセもまた見た事が無かったのだ。
「あ、あのっ……お水飲む?」
「……あァ」
 何だか急にソワソワしたナセは、水差しへ手を伸ばすと冷えた水をグラスへ注いだ。
 ぐったりとソファに凭れかかっていたクロコダイルは、右手を伸ばしてそれを受け取り、ゴクゴクと飲んだ。上下に動く喉仏も、また艶めかしい。
 ナセは知らず知らずの内に唾を飲み込んでいた。
「――何だ?」
 そのナセの熱い視線に気付いたのか、クロコダイルは片眉を上げる。ナセはハッとして、グラスを受け取ると勢い良く頭を振った。
「何でもっ……わ、私、本読むね!」
 ナセはクロコダイルの事が直視出来ず、慌てて手元の本を開く。
「……?」
 クロコダイルはナセの様子を訝しげに見つめたが、本に集中し出したのが分かると、フイと視線を逸らした。
 風呂が苦手な事がバレずにホッとしていたが、そんな事よりも、すぐ傍に寄り添うナセの事が気になってしまう。
 男女が密室に二人きりで、しかもお互い風呂上がり――ここが“そういう店”なら、やる事は一つだろう。
 クロコダイルはもう一度、ナセを見る。俯いているのもあって、ナセの方を向いても見えるのは綺麗な髪だけ。自分の視線には気付きそうもない。
「……」
 触り心地の良い栗色の髪、白くきめ細やかな肌、ふくよかな女性の部分。今は見えないが、まだまだ子供のあどけなさが残る瞳や唇は目に浮かぶ。互いに寄り添うように座っているから、ナセの体温と呼吸は直に伝わってくる。
 ふと、クロコダイルの頭に邪な想いが過ぎって、右手がそれに反応するようにピクリと動いた。

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