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 クロコダイルはスプーンをトレーに置くと、ナセの頭を優しく撫でる。
「大分良くなった、かもな」
 ナセの髪は思った通りの柔らかな触り心地だった。
「……ふふっ、良かった!」
 心地良さそうにナセが目を細めているのを見下ろしながら、クロコダイルはまた口角を上げていたが、それに自分で気付いても今は直そうとは思わなかった。
 そして、マリージョアへの航海一日目は怒涛に過ぎていった。
「ふあ……眠い」
 部屋の中についているシャワールームでシャワーを浴びたナセは、タオルで髪を拭きながら部屋に戻った。が、その姿を何となく目に留めたクロコダイルは、ギョッとした顔つきになる。
「……? どうしたの?」
 ソファに腰掛けるクロコダイルの隣に、首を傾げながら座ってワシャワシャと続きを拭く。すると頭上から機嫌の悪そうな声が降ってきた。
「……出し過ぎじゃねェのか」
「へ?」
 何が、とタオルをスルリと取って、ナセはクロコダイルを見上げた。むすっとした表情と目が合う。
「露出が多いだろうが、それはよ……」
 クロコダイルが鉤爪で示すのは、ナセの服装の事だった。
 キャミソールとショートパンツと云う軽装備からは、白い肢体が眩しく伸びている。更に、髪は濡れそぼり、大きな瞳で自然と上目遣いで見上げられれば、クロコダイルも息を飲まずにはいられなかった。
「えー、だって暑いんだもの。アラバスタの夜は寒いから、さすがにこんな格好では寝ないけど……あ、そっか。普段はそんなに肌出してなかったものね」
 見慣れないから驚いてるんでしょ、と無邪気に笑うナセに、クロコダイルは小さく首を振り、やれやれと溜め息を吐く。
「サーもシャワー浴びてきたら?」
「あ、あァ……」
 クロコダイルは顔をしかめた。その理由が分からないナセは、ん? と首を傾げる。
「どうしたの? まだ具合悪い?」
「イヤ、そうじゃねェが……」
 悪魔の実の能力者の弱点は海で、“水に浸かる”と云う事が同じ弱みとして上げられる。更に、クロコダイルの場合はスナスナの実の能力者ゆえに“水”そのものが得意ではない。だから、クロコダイルは常にシャワーを浴びるにしても命懸けだったりする。そしてそれをナセにあまり云いたくもない。
 仕方無しに、クロコダイルはソファから立ち上がる。
「ナセ、その格好で外に出るなよ。ドーベルマンの野郎が来ても、そのままは駄目だ」
 分かったな、と云い捨て、クロコダイルはさっさとシャワールームへ行ってしまった。
「――? 何でこの格好がダメなのかな……あ、ここは軍艦だからこんな格好で会うのは失礼ね、慎まなくちゃ」
 ナセはそう自分で納得すると、ミス・オールサンデーに借りて来た本を開く。

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