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「サー……戻ったよー」
 クロコダイルが寝てしまっているかもしれないと、そっと部屋へ入ったナセは、クロコダイルが窮屈そうに足を伸ばしているソファへと歩み寄る。
 傍のテーブルにトレーを置いて、その顔を覗き込むと、それに気付いたようにクロコダイルはうっすらと目を開けた。
「……何処行ってやがった」
 首元を緩め、擦れた声で聞いてくるクロコダイルのほつれた髪を直して、ナセはテーブルの上を指さす。
「中将さんのとこ。お願いしてね、これを作って貰ったの」
 その指の先に目をやり、クロコダイルはゆっくりと起き上がった。
「――氷か?」
「うん! アラバスタじゃこういうものは食べられないでしょう? 冷たいものがいいかなと思って」
 ガラス皿に盛られたかき氷は、確かにアラバスタでは食べれないが、クロコダイルは元々食べた事が無かったし、食べたいとも思わないモノだった。
 ナセは嬉しそうに皿を手に取って、クロコダイルに差し出す。
「どうぞ、サー! きっと具合も良くなるよ」
 ニコニコと笑うナセに、要らないとは云えない。ましてや、知らぬ人だらけの軍艦の中を歩き回り、自分の為に調達してきたものなのだ。
 仕方なく、クロコダイルはスプーンを手に取ると、ナセの持つ皿から氷を掬った。
「……冷てェな」
「ふふ、だって氷だもの」
 ナセはクロコダイルの隣に腰掛け、シャクシャクとかき氷を口へと運ぶクロコダイルに微笑む。
 冷たい氷のおかげか気持ち悪さが若干薄らいだ気がして、クロコダイルは知らずホッと息を吐いた。そのまま氷の山を崩していると、ナセの視線に気付く。
「――食うか?」
「え、ホント!?」
 パッと目を輝かせるナセの素直な反応に、クロコダイルは苦笑する。
「ほらよ」
 スプーンに掬って口元へ差し出してやれば、ナセは少しだけ驚いたような顔をしたが、目の前の氷を見つめると誘われるように口を開いた。
「冷たー!」
 キーンと響く冷たさにナセが目を瞑って云うと、クロコダイルは鼻で笑う。
「そりゃ氷だからなァ」
 その言葉に、ナセは微笑む。
「具合、良くなった?」
「……あァ」

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