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「どういう関係……?」
ナセは、何と答えればいいものか首を傾げた。
“バロックワークス”については詳しく知らないが、地下の事務所での出来事は誰にも云わないようにとミス・オールサンデーから云われている。そして彼女自身について口外しないで、とも。
「――私、拾われたの」
「拾われた?」
色々な説明を省き、簡潔にそう答えれば、ドーベルマンは片眉を上げて繰り返す。
「そう……正確に云うと、カジノのマネージャーさんにね。行くアテが無くて、お金も無くて。それで、マネージャーさんがサーに了承を得てくれて――今、傍に居るの」
「……あの男がか……」
やはりドーベルマンにとっても、クロコダイルとナセとの組み合わせは異色であり、誰かを傍に置いている事は不思議でしかなかった。
「中将さんはサーに似てる」
ふふっと笑うナセの言葉に、ドーベルマンは顔をしかめる。
「最初は怖い顔してたけど、とっても優しい人だった……サーも中将さんもそう、優しいから」
「……」
思わぬ言葉を貰い、ドーベルマンはどう答えていいか分からずに後頭部をガリガリと掻いた。すると目的の場所に着いた事に気付き、助かったと足を止める。
「ここ?」
「ああ……すぐに用意させるから、ここで待っていてくれ」
そう云って、ドーベルマンはそそくさと部屋の中に姿を消した。
ナセはクロコダイルの弱った姿を思い出し、すぐにでも戻りたい気持ちでいっぱいになる。
ソワソワしながら廊下で待っていると、ドーベルマンが出てきた。
「……これでよろしいか?」
その手に持つ銀色のトレーを覗き込むと、ナセは嬉しそうに頷いた。
「ええ、ありがとう! 中将さん!」
ナセの満面の笑顔に、ドーベルマンも僅かだったが顔を緩ませる。
トレーを受け取ったナセは、足元に気を配りながら部屋へと小走りで去って行った。
「……」
その後ろ姿を見送り、ドーベルマンは操舵室へと廊下を歩き出す。
「……七武海も一応は海賊なのだがな。久しく船に乗っていなかったか、ワニが船酔いとは笑えるな――」
小さく肩を揺らしながら、緊張感の漂う部屋の中へまた戻ってゆくのであった。
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