おまけ



「だから云った筈だぜ……ルークの野郎も……スキュアもそうだ。力の無ェ奴ァおれの配下にゃ要らねェ……あ? 云い訳なんざ聞かねェぜ?」 
 グランドラインを一隻の海賊船が進んでゆく。白い帆には大きな丸いドクロが笑っている。
「なァ、ベラミー……おれのシンボルにドロを塗りやがった奴ァ消せと云ってきただろう……それが例え仲間であってもなァ……!」
 悠々と海を走る船は軍艦並の大きさで、まるで一流ホテルのように、その甲板には備え付けの広いプールがあった。
 そのプールサイドには、果物や氷いっぱいのワインクーラーを乗せたワゴンが止めてあり、まさに至れり尽せりと用意されていたが、プールには誰も入っておらず、その甲板には人影が見当たらない。
 唯一、大きなパラソルの下には、色の濃いサングラスを掛けた男がデッキチェアに腰掛けており、電伝虫で“とある海賊”と話していた。
「アン? フフ、フフフ……! そうさ、フフフ! おれァ今気が立ってんだ、“シツレン”しちまってよ……フフフフ!!」
 トレードマークであるピンクの羽コートは羽織っておらず、彼は意外にも線のしっかりとした肩を揺らす。相手の電伝虫は、さぞ豪快に笑っている事だろう。
「フフフ、面白ェ事云ってくれるじゃねェか……おれが一人の女にハマるなんざ有り得ねェんだがなァ……!!」
 自嘲のように大袈裟に笑えば、手に持っていたグラスの上等な酒が大きく波打つ。
「そうさ、夢見る時代は終わったんだ……“新時代”がやってくるってよ、“アイツ”にも教えてやらねェとと思ってよ……フフフ! なかなか面白いショーだったぜ!!」
 乾杯の相手も居なかったが、男はグラスを高く掲げ、酒を一気に煽った。
「いいか、利用してねじ伏せろ……! あァ……サーキースにもしっかり釘刺しとけ。女に現を抜かすなとな……フフフフ!!」
 プツリと音がすると、ハイエナのように舌を出して笑っていた電伝虫が目を閉じ、眠りにつく。
 その横では、少し小さな電伝虫が同じように眠っている――彼のプライベートナンバーを持つ電伝虫である。
 男は空になったグラスをテーブルに置き、白いデッキチェアにギシリと寄りかかった。
「――まァ、ちょっとばかしイイ女だったがな……なァに、いつでもかっ攫ってやるぜ? それまで幸せにな、ナセちゃんよ……フッフッフ……フフフフフ!!!」
 額に手をやりながら、彼は瞳が爛々としていた娘を思い出す。
 もし、“彼女”がこれからやってくる“新時代”にもついてこれたなら……。
「今回はおれの敗けだぜ、ワニ野郎――……」
 ドフラミンゴは口許を歪ませると、考えるのを止め、心地良い船の揺れに意識を任せるのだった。



 おわり。

- 106 -

|→


←zzz
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -