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 クロコダイルはミス・オールサンデーと暫く仕事について話していたが、ふと隣に座るナセが紅茶のおかわりを淹れようとしているのが目に入り、声をかける。
「ん? なあに、サー」
 ポットを置いたナセは、クロコダイルを見上げる。
「お前、おれとマリージョアへ行くか?」
「えっ……!?」
 クロコダイルの思わぬ提案に、ナセもミス・オールサンデーも驚いて目を見開いた。
「明日には迎えの軍艦が来て、それに乗ってカームベルトを進めば数週間で着くだろう。それでいつも通り、形だけの“円卓”会議を数日やって帰る。まァ、それだけだがな」
 ずっとアラバスタから出てねェだろう、とクロコダイルは云う。
 ナセはアラバスタに居続ける事にも、レインディナーズの地下に居続ける事にも、何も不満は無かったし、むしろ拾ってくれたのだから感謝して過ごしていた。しかし、クロコダイルが数日間か数週間程、ここを留守にするならば、ついていけるなら一緒に行きたいと思う。
「サーがいいなら……行ってみたい!」
 マリージョアに興味は無かったが、クロコダイルが属する王下七武海の大元・世界政府がどうなっているかは、ちょっと見てみたい気もする。それに他の七武海にも、もしかしたら会えるかもしれない。話には聞いていた七武海の面々と話せたら楽しいかも、とナセはわくわくと答えた。
「いくらあなたの連れと云ったって、マリージョアへ一緒に入れるかしら?」
 ミス・オールサンデーは心配そうに云う。自分が忌み嫌う世界政府に、自分の妹分を連れて行かせたくないと云うのが本音だったが、ナセが行きたいと云う気持ちも分かっていたので複雑な思いである。
「おれァ海軍に信用されてんだ、まさかコイツと何かしでかすなんざ、誰も思わねェだろう。つるのバァさんが好みそうだしな」
「つる……?」
「海軍本部中将のバァさんだ」
 ナセは、なるほど、と頷く。
「――決まりだ。コイツを借りてくぜ」
 クロコダイルはそう云って電伝虫を取ると、海軍本部にダイヤルを回し始めた。きっと、ナセを連れる事を伝える為だろう。
 その背中が心なしか嬉しそうに見えたミス・オールサンデーは、気付かれぬように笑いながらソファを立ち上がった。
「ナセ、航海の準備をしましょう。私のスーツケースを貸してあげるわ」
 促されて、ナセもソファを立った。
 部屋を出て行くナセも嬉しそうなので、ミス・オールサンデーは微笑む。そして、クロコダイルを振り返ると、その背中を一睨みして部屋を出て行った。
「ッ……?」
 悪寒を感じたクロコダイルは振り返るが、そこにはもう誰もおらず、代わりに部屋には電伝虫から届く海兵の声が響いていた。

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