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 レインベースの建物は大体が豪華な仕様だったが、この店もまた同じように煌びやかな外装だった。
 元々“お嬢様“だったナセは、見慣れた建物に懐かしさすら感じていた。クロコダイルに促されて店に入ると中もまた豪華で、ナセは少し苦笑してしまう。
「クロコダイルさん!」
「クロコダイル様だわ!!」
 店で食事をとっていた客達がクロコダイルの存在に気付くと、ワッと店は騒がしくなった。
「これはこれはクロコダイルさん! ようこそいらっしゃいました!!」
 店のオーナーらしき男が奥から急ぎ足で来ると、ナセはクロコダイルの影に少し隠れた。こういう従業員みたいな人間には嫌な記憶があるからだ。
「いつもウチに来てくれてんだ、たまにゃァ売り上げ貢献しねェとな」
「ははっ、ありがとうございます……また近々カジノにお世話になりに行きますよ」
 ハハハと笑ったオーナーが、ふとナセの存在に気付いて目を留める。
「クロコダイルさん、こちらの方は――?」
「今日は二人だ。いつもの部屋にしてくれ」
 クロコダイルは、オーナーや客の視線など気にもせず、さっさと奥の部屋の方へ歩いて行ってしまうので、ナセは慌ててその後をついて行く。
 奥の部屋は豪華さが際立つ造りで、出てくる料理もとても美味しいものだった。それにV・I・Pルームはとても静かで、ナセは心置きなくクロコダイルとの会話を弾ませた。
 殆どがナセの故郷の話や、ミス・オールサンデーに聞いた歴史の話で、クロコダイルは聞いているのかいないのかの微妙な相槌を打っていたが、時折ナセが質問をすると、ぶっきらぼうにもしっかりと答えてくれるので、ナセはふわふわとした気持ちで微笑みながら会話を続けた。
「――さて、そろそろ仕事の時間だ。戻るぞ、ナセ」
「あ、うん! ご馳走様、オーナーさん!」
 クロコダイルに次いでナセが席を立つと、オーナーはまだ物珍しそうにしながらも会釈を返して、店の外まで見送ってくれた。
「ねえ、サー……何でみんな私の事を不思議な目で見るの?」
 レインディナーズへ帰る道も、ナセはクロコダイルの腕に抱きついて歩く。ナセは元から人の視線をあまり気にしない性格ではあったが、これだけビシビシと当たると気にもなる。
「そりゃァお前……おれと一緒に居るからだろう」
 砂になって帰ってもいいが、それではすぐに着いてしまう。出掛ける前に聞いたナセの言葉を思い出すと、何故かすぐに帰ろうと云う気にはなれなかった。

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