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 表口から出て、店の前に居るように云われたナセは、裏口から回ってきたクロコダイルに気付くとダッと駆け寄り、彼の左腕に抱き付いた。
「――? 何だ」
 ナセの表情が曇り気味だったので、クロコダイルは肩眉を上げた。
「……地下に居る時以外で一人で居たのは久しぶりだったから、ちょっと心細かったの」
「たった数分じゃねェか」
「うん、そうだけど……」
 そう呟いたナセが少し俯いていると、クロコダイルは自分の左腕を右に引いた。必然的にそれに抱きついていたナセを自分に引き寄せる形になる。
「わっ――」
 その勢いで少しよろけたナセを抱きとめ、クロコダイルは顎で目線の先の大通りを指してみせる。
「レインベースは人が多い。こうしてりゃァ、はぐれずに済む……お前を一人にする事も無ェ」
「……っ」
 クロコダイルを見上げたナセの表情には、もう陰りは見えず、代わりに笑顔が浮かんでいた。
「ありがとう、サー」
「フン――行くぞ」
 クロコダイルが歩き出し、ナセは慌ててその足を動かす。何しろ体格が違い過ぎるので、急がないとクロコダイルの腕にしがみついたまま、引きずられて歩くような事になってしまうからだ。
「何処へ行くの?」
「云ったって分からねェだろうが。まァ、カジノのお得意様だ」
 早くこの通りを過ぎてしまいたいのだが、半ば走るようについてくるナセに気付いて、クロコダイルはゆっくりと歩幅を縮めながら歩く。
「サー忙しいんでしょう? 急ぐなら私、頑張ってついていくのに」
 ぎゅっと腕にしがみついているナセを見下ろしながら、クロコダイルは首を振った。
「忙しいと云えばそうだが……おれは“英雄”だからな、今は周りの連中がチラチラ見てくるのがうざってェだけだ」
 眉間の皺を深くさせたクロコダイルの目線の先には、こちらを尊敬や憧れの眼差しで見つめる者、ナセを不思議な目で見る者、こそこそと何か囁いている者達が見えた。ナセは、そう云えば先程から妙に視線を感じるなと思っていたが、なるほどと納得する。
「そっか、サーは有名人だもんね」
「七武海と云えど、海賊を讃えるなんざ愚民の極みだぜ」
 ハッと笑い飛ばしたクロコダイルは、ある店の前で足を止める。
「ここ?」
「あァ」

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