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 ナセはクロコダイルの腕をギュッと抱き締めて微笑む。
「サーと少しでも一緒に居れるとね、私は嬉しいの。サーは忙しいからあんまりココに居ないでしょう? 本当はもっとお話したり、カジノで遊んだりご飯食べたりしてね、一緒に居たいの。そう思うのはダメ?」
「……」
 クロコダイルは、ナセの真っ直ぐな瞳を見つめながら何も云わないでいた。いや、云えなかった。胸に起こったざわめきが砂嵐のようで、その違和感に酷く嫌悪していたからだ。
「……サー?」
 ナセが心配そうに自分を呼ぶ声に、クロコダイルは盛大に溜め息を吐く。苛々を抑える為に、葉巻を取り出して火をつける。
「お前が何をどう思おうが勝手にすりゃァいい。それにおれが応えるかどうかは別の話になるがな……」
 クロコダイルは、煙が天井に上って消えていくのを目で追いながら、左腕に絡み付いているナセの頭をそっと撫でた。ナセが、ん? と顔を上げる。
「お前はココに来てから、ほぼレインディナーズを出てねェ。――まァ、少々世間知らずのナセに社会見学させてやるのは構わねェかもな」
 そう云い終えると、自分で云った言葉に呆れたように鼻で笑って葉巻を吸うが、ナセが少々痛いくらいに自分の腕に抱きついてくるので、眉間の皺が深くなる。
「何だ、不服か?」
 ナセはブンブンと首を振って、俯いていた顔を上げると、ふわっと満面の笑みを見せた。
「違うの、ふふっ……サー大好き!」
「――!」
 クロコダイルは目を見開く。またも嫌悪感の抱くモヤモヤが胸中に発生していたが、それに反応する前にはもうナセに腕を引っ張られていた。
「早く行こう、サー! 美味しいランチのお店に連れてってね!」
「……あァ」
 グイグイと少女に腕を引っ張られて歩く姿は彼らしくはなかったが、その表情は彼らしい片方の口角が上がった笑みが浮かんでいた。



「――フフ、珍しいものを見たわ」
 二人が出て行った後、影からミス・オールサンデーが出てくる。
 ちょうど事務所に帰って来た彼女は、クスリと口元に手を当てて笑った。
「あの七武海のサー・クロコダイルと女の子がランチなんて、あまり見られるものではないわよね」
 そう云うと、クルリと踵を返し、ミス・オールサンデーもまた事務所を出て行くのであった。

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