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 元々は良いところのお嬢様だったらしいが、両親を亡くして良家の養女となってからは、自分の居場所が無かったらしい。特にいじめられただとか、辛い思いをした訳では無かったのだが、自分の居場所を求めて家を出たと少女は云った。
「何故、カジノに?」
 ロビンがそう聞くと少女は涙を拭いながら、エヘヘ、と少し照れ笑いをした。
「やってみたかったから……」
 興味本位で入ってみた別世界に魅せられて、つい有り金を全て使ってしまっていたらしい。少々世間知らずのようね、とロビンは苦笑した。
 しかし、育ちの良さから滲み出るのか、凛とした雰囲気と芯の強さが瞳に光る。そんな持ち主などそうは居ないだろう。
(戦う術は知らないけれど、この子が私に助けられたのも運の内かしら……)
 ロビンは、少女が一頻り泣いて落ち着くのを待ってから、その手を握って立ち上がらせた。
「すぐそこの裏口から私の部屋に行けるわ。シャワーを浴びて着替えましょう。それからクロコダイル――カジノのオーナーに逢ってもらうけれど、いいわね?」
「クロコダイルって……七武海の?」
「あら、知っていて? そうよ」
「……」
 少女の不安そうな様子に気付いて、ロビンはフッと笑った。
「大丈夫よ、あなたを放り出したりはしないから」
 その言葉に顔を上げた少女に、ロビンは頷いてみせる。少女が安堵の表情を浮かべると、ロビンもつられて微笑んでいた。
「そうだわ、あなたの名前は?」
「ナセ、です」
 ロビンは少し迷ったが、無難にコードネームを名乗る事にした。
「私はミス・オールサンデーと呼ばれているわ」
「みすおーるさんでー?」
「なんとでも呼んで」
 コードネームに首を傾げたナセだったが、あまり気にする事なく、じゃあ――とロビンを見上げた。
「何?」
「お、お姉さんって……呼んでもいい?」
 それに少し驚いてナセを見れば、俯いてはいたが、きっと顔は赤いのだろう。
「ええ、いいわ」
 クスリと笑ってロビンは歩き出した。
(この子を放しはしないのだから、それもいいわよね……)
 ロビンはナセの手をぎゅっと握る。
「ありがとう……お姉さん」
 それに応えるようにナセが笑って小さく呟いた。




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