09
「あなた、戦闘能力は無い?」
「え? せんとう……? は、無い、です」
 戦闘能力があれば、男たちと同じ労働と云う名の、ビリオンズ、もしくはミリオンズとしての活動に交じる事も出来たかもしれないのだが。
「そう――」
 ロビンは小さな溜め息を吐いて体勢を戻した。
 すると従業員らは少女を立ち上がらせようと、三人がかりで無理矢理に引っ張り上げるが、少女は必死に抵抗し、暴れまくる。
「イヤ……ッ! 放してッ、体を売るなんて嫌!! それ以外なら何でもやるから!! 許して下さい!!!」
「いい加減云う事聞きやがれッ!」
 痺れを切らせた従業員の一人が、手を振り上げた。
「その子を放しなさい」
「マネージャー!? 何を……!」
 ロビンは振り上げた男の手を掴んでいた。
「その子を解放しなさいと云っているの、分からないかしら」
 ロビンの冷たく鋭い表情に、従業員らは少女から手を放すしかなかった
「……、しかしマネージャー、これはクロコダイルオーナーが決めた事で御座います。ご勝手に規則を破られては……」
「力の無い者に手を上げる事が規則と云うの? 第一、こんな事が表に知れてみなさい。店の評判を落としたら、そのオーナーが黙っていないわ。この騒ぎが彼の耳にでも入れば――」
「ひィ……!!」
 仕事はスマートに遂行する事がクロコダイルの教えである。下手に騒ぎになれば、得意の客足も途絶えてしまう。“英雄、サー・クロコダイル”の看板を汚す事は許されないのだ。
「……ではこの娘はどのように? 海にでも放り出しますか?」
 うずくまって震えたまま、成り行きを見守っている少女を一瞥して、従業員が云う。
 ロビンはまた表情を険しくさせた。
「この子は……私が始末するわ。あなたたちは表の仕事に戻りなさい」
「で、でも……」
「二度は云わないわよ。それとも“砂”になりたくて?」
 冷たく微笑めば、答えるまでもなく男達は表通りの方へ逃げて行った。
 それを見送ってから、ロビンは小さく息を吐くと、未だに地べたに座り込んで、自分を不思議そうに見上げている少女の傍にしゃが込む。
「もう大丈夫よ、あなたを娼館に連れて行きはしないから」
 少し乱れた栗色の髪を撫でれば、我慢していたのか少女はワッと泣き出した。
「こっ、怖かった、の……! わ、私……そんな、事する為に……っ……家を出てきたんじゃない、のに……!!」
 しゃっくりを上げてポロポロと涙をこぼす少女は、ロビンに背中を優しく撫でられると、ゆっくりと今までの経緯を話し出した。

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