◆立海の2月14日
「幸村くん、これ受け取ってくれるかな」
騒がしいクラスメイトの間を縫って俺の机の前に来たのは、檜山さんだ。
檜山さんは、俺のクラスの委員長さん。
大人しくて、最近は眼鏡からコンタクトに変えたみたい。
理由が気になる。
俺は、眼鏡派なんだけどなぁ。
「いいの?」
「うん。貰ってくれる?」
「ありがとう」
手渡されたのは小さなピンク色のセロファンの包み。
赤色のリボンで留められていて、中身はマドレーヌかな。
「それで、お願いがあるんだ」
檜山さんからのお願い、ね。
少し、意外だ。
ていうか、ちょっとだけイヤな予感がする。
「ま、丸井くんって誰からでもお菓子貰うのかな
?」
まさかの丸井だよ。
どう見ても、柳とか柳生が好みって感じなのに。
あぁ、お調子者としっかり委員長のパターンだ!
何かショックだ…
そりゃ、期待しちゃうよ…
ぎゅぅっと握っている紙袋には、俺のより一回り大きめの包み。
だよね
「丸井はお菓子が好きだから。だけど、もし檜山さんに勇気があるなら気持ち、伝えてみたら」
「え…」
無理無理、と俯く檜山さんは、いつもの檜山さんじゃなかった。
耳も赤いし。
「俺は丸井の好きな子とか分からないけど、丸井は適当な返事はしないよ」
お調子者だからこそだ、読めるんだよなぁ
感心するよ
「ん、分かった」
握りこぶしをつくった檜山さんは、俺の知ってるしっかり委員長の檜山さん。
らしくて、素敵だね
「幸村くん、ありがとう。やっぱり、優しいね」
「どういたしまして」
一人残された俺は、丁寧にマドレーヌを仕舞った。
だってさ、丸井のことを聞く為に俺のことを考えてくれたんだから。
それはそれで、有りでしょ。
「さぁて、真田を拾って行こうかな」
まだ騒がしい廊下を足早に、A組へ向かう。
あ、その前にB組を覗いて行こう!
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