浸かる


疲労に満ちた身体を包む小さな身体。

月明かりはなく、朧げな明かりは檜佐木が点けた。部屋の明かりを点けないで、と海子が言うから。

三週間ぶりに会えたね、と海子は胸に顔を埋めた。汗と埃の匂いに笑った。からからと喉が渇く。檜佐木は、それを振り払うかのように深呼吸をした。

ツ、と手を海子の背中から首筋に伸ばした。ピクリと跳ねるが、心地好いのか首を倒す。

「海子」

少し低いだけの身長。海子の髪が鼻を擽った。薄く載せられた紅を檜佐木は親指で拭った。同時に海子の唇が、檜佐木の唇を捕らえた。

何も音がしない部屋。外では、リンリンと虫が鳴く。

檜佐木は海子の唇を食み、口内を侵食した。音は立てず、ただ侵食した。時折、海子が離れようとするのを良しとせず。

抱えた後頭部を少し緩める。すると海子の唇が更に開いた。狙っていたかのように、食らいついた。

鼻に抜ける海子の声。檜佐木の背筋を這い、身体の奥を高ぶらせた。ちゅぷりと唇を離す。唇の周りには、佐木のそれ。檜佐木は自分のを拭い、海子の唇を拭う。

恥ずかしがる海子を見るのは、三週間ぶり。

スルリと死魄装を開け、腰帯を抜く。バサリと落ちた袴を檜佐木は蹴り払う。海子の裸体に、襦袢の白と死魄装の黒が重なる。

檜佐木の手から程よく零れる双房。左手は首筋を撫でる。

俯かず、檜佐木を見つめた海子。檜佐木は、煽るなよと願った。

檜佐木は海子の首筋に噛み付いた。

「ひゃ、ぁ…ん」

後退りする海子の足を足で搦め捕る。
逃がさない

膝を割り入れ、海子のソコに擦る。ほのかに感じる温さ。

嬉しいじゃねぇの
思わず舌なめずりをした。

それに呼応するように海子の舌が這い出た。そこに人差し指を載せた。んくんく、と舐める海子。

最高だ
誰にも出来やしないことだ

檜佐木は、高ぶるソレを海子の腰に擦り付けた。温さは海子と同じかそれ以上。海子が指を銜えたまま、言った。
「早く…埋めて」

誰が、こんなにしたんだよ

檜佐木は、海子のソコに指を入れた。ビクリと跳ねても、腰は揺れる。海子の口から抜いた人差し指で胸の頂きを食らう。

ああ、俺かとくつくつ笑いながら、指を抜いては挿す。

静かだった部屋に水音がする。猛るソレの為に、檜佐木は指を抜いた。海子の腰と足が、檜佐木から離れない。早くというように。

「今、やるよ」

ニタリと笑えば、海子は檜佐木が埋めていた指を取り、加えた。僅かな上目遣いと時折見せる赤い舌。

俺って変態かも

幾度となく貫き、海子の行為に欲情し、更に貫いた。

果てた時には海子の唇は乾き、喉は渇き、声は嗄れた。

「し、しゅ…う、修兵、おめでと…」

誕生日、と囁く海子。

檜佐木は、忘れていた暦を思い出した。あとで渡す、と微笑む海子に檜佐木は思った。

普段なら此処までしねぇじゃねぇか
気付けよな、俺

檜佐木は海子に済まないと謝った。

「馬鹿だなぁ。修兵が好きだからするんだよ」

じゃなかったら、しないと。

幸せ者かと海子に問えば、もう少し檜佐木自身を労ってくれたらと言った。檜佐木は休憩ぐらいは取ろう、と三席にも言おうと決めた。

静かな部屋から洩れるのは、二人の声。



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