ごぉ


 風紀室を出てから、今度こそ寮に帰るべく歩き出した俺だったのだが、なぜか途中で倫太郎に出会ってしまいました。

「今は風紀室に行かない方がいいと思うよー。委員長がうさぎちゃんとらぶらぶしている最中だと思うからぁ」

 そうそう。じゃましないであげて。もしかしたら、今頃、隣の仮眠室でR18になってるかもだから。

 ああ、でもいちゃらぶしているところに誰かが入ってきて、慌てる雨佐君も捨てがたい。顔をリンゴのように真っ赤にして、そして、そんな雨佐君を抱きしめることで他者の目から隠す峰倉先輩。ぐはっ、萌です!

「うさぎ……委員長の従兄弟のことか。なんだ、ようやく委員長に助けを求めたのか?」

「そんなとこ。たまたま親衛隊に絡まれてるところに、俺が行き当たっちゃってさぁ。強引に風紀室に連れてったの。あ、未遂だから安心してね」

「――ちょっと待て」

 はぁ、と溜息をついた倫太郎は、不良さんでも泣いてしまいそうなほどの鋭い眼光で俺を睨みつけた。

「お前、そういう時は風紀に連絡しろって言ってるだろ。万が一、お前も襲われたらどうするつもりだ?」

 実はちょっと危ないところでした、なんて言ったら説教コースが待っているから言わない。

 俺は腕っ節が強いわけでも、逃げ足が速いわけでもないからね。むしろ、体育の成績はとっても残念な子だったりする。俺の運動神経は死滅しているらしい。倫太郎が心配するのも当然というわけだ。

「こ、今回は、副会長の親衛隊だったから大丈夫だと思ったんだよー。それに、危なくなったら時雨先輩に連絡しようと思ってたし」

 生徒会の親衛隊は個人の親衛隊と比べ、横の繋がりが強いからね。制裁現場に出くわしたとしても、それが生徒会役員ならば口封じのために暴行なんてことにはならないはず……たぶんね。

「どの隊でも、だめなもんはだめだ。いいな、次からは絶対に風紀に連絡するんだぞ」

「はぁーい」

 倫太郎は見た目によらず過保護だ。一年の時なんて、一人っ切りで人気のない場所を歩くな!って耳にタコができるくらい注意されたもんなぁ。強制的に防犯ブザーを持たされたこともあったし。

 まあ、スタンガンを用意してくれた時雨先輩や、高等部への進級祝いに催涙スプレー(手作り。超強力)をプレゼントしてくれた深雪先生には負けるけどね。

 ちなみに鏡慈先生はGPS機能搭載の携帯電話を買ってくれました。居場所は常に把握されてます。

「しかし、とうとう委員長の従兄弟にまで手を出し始めたのか。あいつら、ほんと自重を知らねぇよな」

「うーん。一応、釘は刺しておいたけど……」

 生徒会室での俺の言葉が届いているならば、副会長たちも親衛隊に対する態度を改めるはずだし。そうなれば、少しは雨佐君への制裁も和らぐのではないだろうか。

 それに、今度からは風紀も表立って動くだろうし。いっそのこと、従兄弟同士だって公表しちゃえばいいんだよ。

「ところで、この怪我はなんだ?」

 本当は包帯をぐるぐる巻かれるはずだったんだけど、大げさすぎるからって断わってガーゼを貼るだけに留めてもらったんだよね。できるだけ前髪で隠してはいるけど、それでも完全に見えないわけではなくて。

「……転んじゃった」

「ほーう。嘘だったら、風霧先輩に通報するけどいいか?」

「ごめんなさい。実は生徒会室で野生の猿にやられました」

 山奥だからね。いてもおかしくないからね。でも、倫太郎はそれで誰にやられたのかわかってくれたと思う。「あいつか……」と憎々しげに呟いてるし。

「でも、副会長たちにはびしっと言ってきたよー。このままの状態を続けるなら、リコールされる前に辞任しろって用紙もつきつけてやったしー。褒めて褒めて〜」

 倫太郎にぎゅっと抱きついて、肩口を額の怪我をしていない部分でぐりぐりする。

 倫太郎はノンケだから、いくらくっついても大丈夫なのさ!だって、二年の姫って呼ばれてる子に告白されても、「下に同じもんついてる時点でむり」って断わってたもん。

 なんで知っているのかと言えば、瑞実と一緒にのぞkごほんごほん。

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