にぃ


「ってか、お前こっち見ろよ。どうして目を合わせないんだ?」

 鋭すぎるツッコミに、俺は思わず肩をびくっと揺らしてしまった。目を見れないのはあれです。ぶっちゃけ恥ずかしいからです。

 だってさ、顔を見たらなにを口走るかわかんないんだよ。自分の想いを自覚したわけだから、今まで保留にしていた返事をしようとは思う。でも、一日くらい冷却期間を置きたいというか。

 後夜祭は萌えの宝庫だけど、お願い早く終わって!という気分なんだ。切実に。

「き、気のせいなんじゃなーい?」

「気のせいじゃない。片付けの間も、一度もこっちを見なかった」

「それは片付けに熱中してて……」

「名前を呼んでも無視しやがったくせに」

 無視しましたとも、ええ。恥ずかしさ爆発だったから、気付いてない振りしてましたけどなにか!

「怒ってんなら謝る。だから、無視すんな」

 怒ってなんかないんだけど……ここは怒ってることにして切り抜けた方がいいのかな?ああ、でも顔を見たらアウトなんだった。

 別にこれが初恋ってわけじゃないのに、なんか今までと勝手が違う気がする。ドキドキすることはあっても、相手の顔を見れないなんて初めてだよ。

「漣」

 そうこうしているうちに、連夜の忍耐が限界を迎えたようです。不機嫌な声が至近距離から聞こえたと思うと、強引に腕を引かれて、真正面から顔を合わせる格好になった。だから、心の準備が!

「なに変な顔してんだ?」

「へ、変な顔って!」

 自前ですがなにか!?ってか、自分がどんな顔してんのかよくわからない。連夜さんは相変わらずの男前ですけどね、ええ。薄暗い中、濃い陰影を落としている顔がいつもよりカッコイイなんて詐欺だと思います。惚れた欲目ではなく。

「別に、変じゃ、ないしー」

 うん、明らかに変だよ。いつもの俺どうした!ゆるゆる〜っとした空気よ戻ってきて!

「疲れたのか?」

「ええと、疲れたってのもあるけどー…それとこれとは別問題といいますかー…」

 あ、しまった。疲れたことにしとけばよかった。俺のバカちん。

 曖昧に言葉を濁したのがいけなかったのか、連夜の眉間のシワが深くなる。ああ、着々と不機嫌モードに移行しつつあるよ……。

「俺には関係のないことか?」

 いや、バリバリ関係あります。むしろ、最大の原因です。徐々に低くなる声がマジで怖い。そういえば、連夜はヤンデレ予備軍だった。

「ち、違う!」

 俺の脳裏を、ちょっとした誤解から連夜に避けられていた時の記憶が過ぎる。あの時は本当に苦しかった。どうしてって疑問に思うくらい。

 ――あ、そっか。

 俺は、自覚してなかっただけで、あの時から連夜のことを好きになっていたんだ。

 きっかけはわからない。でも、それが当然のように、俺は連夜に惹かれていた。その想いが、リレーの最後で弾けたのだ。

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