※メルトダウンのリザver.
回復不能の崩壊
彼が家に来た。というかついてきた。久しぶりに仕事が早く終わったから、とか君の料理が食べたくて、とかもっともらしい理由を並べ立てていたけれど、本当は今日のデートのお相手がキャンセルになっただけでしょう。
言うだけ虚しいから言わなかったけど。
夕食を食べて、シャワーを浴びて、のんびりとリビングで話をした。その間に私は銃を手入れしながら。
オイルの匂いが布から香り、ふと思い付いたままに彼に問う。
死に対して恐怖感はありますか?
なんでこんな質問をしたのか自分でもよくわからなかった。
彼の答えは曖昧、そして私が思うのと同じだった。
きっと本当に死に直面したら少なからず恐怖を抱くはずなのだ、と思う。
でも。
彼に銃を向けられ、また私も向け返した時は、別に恐怖も何もなくて。
彼のセリフが冗談だと冷静に判断していたのもあるけど、このまま一思いに、でも良いかななんて考えてしまった、しかしまあそれすらおふざけだったのかもしれないが。
よくよく考えればおかしな話だ。私達が引き金を引くタイミングが僅かにずれてしまえば、どちらか片方が死にどちらかは無傷の場合だって無いわけではない。
第一彼は銃の扱いが下手なのだから、万一死に際に引いたとしても頭蓋骨をかすって私が苦しむに違いない。
正直に言ってみると彼はあっさり銃を降ろした。一応私を大切に思ってくれているわりには一緒に死ぬのはいとわないのかと思った。
彼の優しさ(?)に感謝しながら、本気のようだった彼にゾッとした。
(貴方の腕が良かったら今頃私は…)
-end-