小説 | ナノ
pan2
 カフェオレ色の真琴の髪がゆらゆらと夏の香りを纏う風に靡かれている様を見ながら、江は女子更衣室へと入った。
 もう、部活終了十分前だということは先ほど時計で確認した。たぶんそろそろ、真琴の号令が聞こえてくる頃合いだろう。
「ラストー!」
 壁を隔てた向こうで男らしく、水の中にいる人にも聞こえるぐらいの大きく、普段会話している時よりも固い声が聞こえる。
 予想通り、彼の声だ。
(うん、ぴったりの時間)
 江はにんまりと口元に笑みを浮かべた。
 今日もその声は、男らしく、尚かつどこか腰を痺れさせる毒を持っていて、ミツバチが運んで来た蜜のようにあまったるい。
 男を感じさせるようで、そうでない。真琴先輩の声帯はどうなっているのだと一度事細かに調べたくなるぐらいだけれど、しかしそれは江が彼に惚れているからそのように特別に思えてしまうのかもしれない。

 もうすぐ部活が終わる。部活の始めと終わりは、マネージャーにとって一番忙しい時間帯だ。
 脳内で片付けなければいけない雑務を整理して、リストアップ。それから、それらを効率が良い順番に並べ替え、実行。女子更衣室に整頓された必要なものを手に持ち、江はプールサイドへと飛び出した。
「ひゃっ」
 途端、部員達のバタ足から飛び跳ねた水しぶきが目に入り瞼をぱちくりしてしまう。
 これにも随分と慣れたものだ。マネージャーを始めたばかりの頃は、まだそれにすら慣れてなくて目に飛沫が入った際は、ごしごしと指先で目の違和感を拭っていた。今となれば、瞬き数回でその違和感はあっさりと消えてしまう。なんだかそんな小さなことだけで、自分も岩鳶水泳部の一員である証な気がしてしまって、江は好きだった。
 そんなことを思っているうちに、泳ぎ終えた部員たちがバシャリとプールサイドに上がってくる。
 江は慌てて、自身の仕事を全うするべく、手にしていた人数分のタオルを配りに皆の元へと歩み寄った。

「江ちゃん、今日この後時間大丈夫?」
 部員達が「疲れたー」「はらへったー」と各々好き放題口にしながら更衣室へと向かっているのを尻目に片付けに徹していると、真琴が声をかけてきた。
 背後から突然声をかけられたので、どきりと心臓が飛び跳ねる。真琴の声は、心臓に悪い。
 彼の声にどぎまぎしていることを悟られたくなくて、江はなんでもないように振り返って、身体の水気をとっている真琴を見上げた。
「大丈夫ですよ」
 何だろう、と江は首を傾げる。
 昨年度の夏の大会が終わり、プールに入れなくなる季節の頃に真琴と江は先輩後輩、部長とマネージャーという関係に加えて恋人という関係を築いた。その頃から、ふたりは当たり前のように共に帰宅していたから今更「この後時間大丈夫?」などと確認を取る必要などないだろうに。
 黙って説明を糾すと、真琴はやわらかく頬を緩め、口を開く。
「ならよかった。そろそろ備品足りないもの出てくる頃かなと思って、点検しておきたいんだ」
「ああ! 私も真琴先輩に言わなきゃって思ってたとこだったんです」
「うん。じゃあ着替え終わったら呼んでね」
「はい」
 それじゃ、と手を振り真琴は男子更衣室へと去って行った。備品の点検をするということは、帰り道だけではなく、いつもより長く一緒にいられると思うと心が踊る。
 江のトレードマークとも言える赤いポニーテールを嬉々と揺らしながら、江は後片付けに精を出すのであった。



 真琴は左手首に巻き付けてあるオレンジ色の時計に視線を落とした。部員達は皆颯爽と着替えて帰宅してしまい、残るは真琴ひとりだ。
(遅いな……)
 消耗品である備品は、主に江が扱うことが多いため、女子更衣室に置くようにしている。だから先ほど、江にあらかじめ着替え終わったら呼びに来るようにと伝えたのだが……それにしても遅い。
 もしかしたら江に何かあったのかもしれない。嫌な方向へ思考が転がり、真琴はぱちんと弾けたように顔を上げ立ち上がった。
 プールサイド側からつかつかと大股で女子更衣室の扉の前に経つと、中は電気がついたまま、物音がしない。貧血か何かで倒れてやしないだろうか。ぞわりと真琴の背筋に悪寒が駆け抜け、その衝動のままにドアノブを回し扉を開け放った。
「江ちゃん大丈夫!?」
 バタンッと大きな音が更衣室内に反響した。時が止まってしまったかのようにピタリと動けないまま真琴は呆然と立ち尽くした。

 ――室内にいた、着替え途中の江も。

「きゃああっ! せ、せんぱい!?」
「わ、わあっ! 江ちゃん、ご、ごめん!」
 しゃがみ込みながら悲鳴を上げる江の声に真琴はようやく現状を理解し、慌てて背を向けた。
(長袖ジャージに……下は、ぱんつだったよね、あれ……)
 着替え途中だったらしい江の姿は、水泳部で揃えて購入した長袖ジャージに下半身は下着のみという姿であった。
 ごめんと謝りながらも、しっかりと見てしまった彼女の姿が真琴の瞼の裏に焼き付いて離れない。
 冷静になろうと自身の腕を力の限り抓ってみる。しかし、むらむらと腹の底から沸き上がる欲に、その程度の痛覚では全くと言っていいぐらい効果がなかった。
(どうしよう……勃っちゃった)
 しっかりと熱を持って勃ちあがってしまった自身に視線を落とす。近頃、部活も本格的になってきたせいか、江とそういったことをする時間が全くとれていなかったせいもあってか、真琴のそれは吐き出さないと最早どうにもならなそうであった。
「ま、真琴先輩……あの、扉……閉めてもらえませんか……?」
 後方から江のか細い涙声が聞こえ、真琴はビクリと身を震わせた。勃起してしまったことに頭を抱えていることをバレてしまったのかと思ったが、そうではなかったようで、真琴はまた慌ててごめんと告げた。

 一度外へ出て、扉を閉めようとした時だ。
 再度、ちらりと彼女の姿が視界の隅に入る。
 あられもない姿を恋人に見られ、恥ずかしいのか江は顔を赤くし、とろりと飴細工を溶かしたような甘い瞳は羞恥に耐えられず涙の膜が張られている。艶かしいすらりと長く、しかしむっちりと肌触りの良い太股が眩しい。桃色の唇は薄く開かれていおり、触れたときの感触を真琴は思い出してしまった。
 ぶつりと、必死に繋ぎ止めていた理性が切れる音を真琴の冷静な部分がしかと聞いた。
 後ろ手で扉を閉め、しっかりと施錠する。
 ぽかんと、驚き、口を開けて真琴を見上げる江の元へとゆったりと歩を進めると震えた声で不思議そうに江は首を傾げた。その仕草すらも、今の真琴にはただの興奮材料にしかならない。
「まこと、せんぱい……?」
「ごめん、江ちゃん……我慢出来そうにない……」
「えっ?」
 しゃがみ込んでいる江に合わせて膝を折り、彼女の力を込めたらいとも簡単に折れてしまいそうな両手首を捕らえると真琴はそのまま桃色の唇に自分のそれを重ねた。真琴の拘束から逃れようと腕を引く江だが、所詮それは形だけの抵抗となる。
 息継ぎで開かれた唇の隙間から真琴はすぐさま舌を滑り込ませ、江の咥内をねっとりと舐め回す。
「んぅっ……ふっ……」
 上顎を舌先で撫で擦ると、熱くなった吐息と共に甘い声が彼女の唇から紡がれて真琴は機嫌を良くした。
 舌を絡めて吸い取り、扱いては舐め上げる。
 江が頭を振る仕草を見計らい、ようやく真琴は彼女の唇を解放した。
 とろとろに溶けきった表情で、彼女がもう抵抗しないことを悟ると、真琴はまるでご褒美をあげるみたいに江の額に口づけ、それから首筋に顔を埋めながらジャージの上からやわらかな胸をやんわりと揉みしだく。
「江ちゃんのここ、立ってきてる」
「ぅんっ、やぁっ……」
 ジャージのファスナーを引き下ろし、脱がしたそれをぽいっとロッカーの上へと投げた。Tシャツの裾をたくし上げ、指先でいやらしくへそをなぞり、江の胸元まで来たところで、ブラジャーをずりさげて胸をあらわにさせた。
 ふるりとこぼれた程よい大きさのそれにごくりと喉が鳴る。
 真っ赤になった江は目を瞑って、必死に顔を逸らしており、次にくる刺激に備えているようにも見える。
「かーわいい……」
 ぷっくりと立ち上がってしまったピンクの先っぽをくりくりと指先で摘んだり弾いたりを繰り返していると増々それは固くなっていく。
 それらに比例して、江の鼻にかかった甘ったるい声が大きくなり、真琴の鼓膜を揺さぶった。
 唇を寄せて、指先で弄んでいた可愛らしい乳首を咥内に含むと、江の身体がびくりと飛び跳ねる。その感触を舌先で堪能しながら転がしていると、気持ち良さそうに喘ぎながら身体をくねらせ、江は膝頭を擦り合わせる。
(……乳首で気持ち良くなっちゃって、もじもじしてるんだ……可愛い……ぱんつびしょびしょにしてるんだろうなあ……)
 一頻り江の反応と乳首を楽しんだ真琴は、そろりと江のまるく、傷一つない膝頭に手を置き、ぐっと少し手に力を入れるといとも容易く彼女の足はM字に開かれる。
「あっ、やっ……」
「嫌じゃないでしょ? さっきから江ちゃん、触って欲しくて仕方なかったくせに」
 江の足の間に視線を落とすとベビーピンクのぱんつが見えた。クロッチ部分は予想していた通り、彼女の愛液によって濡れており、濃いシミが出来ていた。
 すり、と人差し指と中指でシミを撫で付けるように擦る。爪先からビクビクと身を震わせる江が可愛くて、くすりと笑みを漏らした真琴はそのままそこに顔を寄せた。
「え、ちょ、やだっ! せんぱ、だめ、」
 何をされるのか瞬時に悟った江は、股の間に顔を埋める真琴の頭を懸命に押し戻そうと腕をつっぱるけれども、敏感なそこに走った快感にその行為は無意味なものになる。
 ぴちゃりと真琴の分厚い舌がクロッチの上からそこを這う。すん、と鼻を鳴らして江のいやらしい匂いを堪能しながらやらわかな肉を唇で食む。
「ぁ、んっ……ふっ……や、ぁ」
「んっ……おいし」
 舌先を尖らせてぷっくりとふくらみ始めた陰核をこまかく弾けばビクビクと真っ白な内股が震えた。
「やっ! やだぁっ……せんぱ、きたないっ……からぁっ……」
 泣きじゃくりながら江は真琴のはしばみ色の髪を掴み、必死に引き離そうとする。けれども力の入らない抵抗はただ真琴の欲を煽るだけだ。
 髪を握る江の手に力がこもる度に、真琴の口角が上がる。
(江ちゃん、感じてくれてる)
 やだやだと言いながらも素直に感じてくれる彼女の様子に愛しさが込み上げてくる。
 クロッチの脇、際どいところに舌を這わせる。核心的なところを刺激されないせいか、焦れったそうに自身の気持ち良いところに真琴の舌をあてようと腰を揺らめかす。
「ま、まこ、せんぱ……っ」
「うん?」
 夢中になって際どい部分を愛撫していた動きを止め、顔を上げると、扇情的な色を含んだ赤い瞳とかち合う。彼女の視線だけで、何を伝えたいのかすぐにわかってしまう。
 ――でも、思い通りになんてしてあげない。

「どうしたの?」
 わざと素知らぬフリを装いながら真琴は悪戯に目を細めた。
 確信犯な真琴の言動に江のふたつの赤がゆらりと揺れる。恥ずかしい、けれど、欲しくてたまらない。真琴は江のこの表情を見るのがとても好きだった。だから、ついつい意地悪してしまう。
 手を出したのは自分だというのに。
「先輩、いじわるっ……」
「ごめんね。でも、俺、言ってくれないとわからないなあ」
 じっとりと指先で薄い布地の上から入り口を撫で回す。
 んっ、と甘い吐息を漏らしながらどんどん江の表情に余裕がなくなっていく様子を真琴は一秒でも逃すまいと見つめ、さあ早く言えと糾した。

「……もう、せんぱいの、ちょうだいっ」

 ずくり。張りつめた自身が更に増長し、熱を持つ。
 随分と長い時間楽しんでしまったお陰で、真琴もかなり限界が近かった。これは長く持ちそうにないな、とどこか冷静な部分が思う。
「いい子」
 性急にベルトを外し、下着から自身を取り出すと、先っぽはすっかり先走りで濡れている。扱きながら避妊具を取り出し、装着すると、もう準備は万端で。
 痛い程腫れ上がってしまった自身が、早く彼女の中に入りたいと言わんばかりにドクドクと脈打つ。
 江ちゃんも江ちゃんで、可愛らしいレースで装飾されたぱんつは、もうどうしようもないぐらいびしょびしょに濡れそぼっており、真琴のものが早く欲しいとそこをひくつかせているに違いない。
(絶対、このぱんつ履いたままじゃ帰れないだろうなあ)
 心の中で謝罪を唱え、彼女からの文句は終わってから存分に聞こうと思った。
 今は、はやく彼女とひとつになりたい。
 しっとりと濡れて江のそこの形にぴったりとくっついてしまっているクロッチをサイドに避け、真琴は衝動のままに江のそこへと押し入った。



140517
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