愛とか恋とか、そんな不確かなものを信じるほどあたしは純情じゃない。かといって、そういうものに憧れないかと言われれば嘘になる。
でも恋愛、というものをするにはあまりにもあたしは臆病だった。
掴まれた腕がひどく熱い。端正な顔が近付いてくるのをあたしはただ茫然と見ていた。
「静雄、さん…?」
「…うるせえ」
少し赤くなった顔、あたしを捕らえる真っ直ぐな目、頬に触れる優しくて大きな手。
どれも愛おしくて、けれど怖い。
永遠がないことを知っているあたしには、この胸の暖かさすら心から信じることができなかった。
「…ごちゃごちゃめんどくせぇこと考えてんじゃねぇよ」
「え…?」
更に顔が近付いて、お互いの息がかかるくらいの距離になる
「俺は、お前が好きだ。
…それじゃ、駄目か?」
時間が止まった、ような気がした。
あんなに怖かったこの気持ちが今はそれすらも愛おしい。
目を閉じると柔らかな感触が唇に伝わって、思わず涙が零れた。
臆病者の恋(貴方と一緒なら怖くないよ)
スランプです…