素直じゃないのはお互い様
「ん、」
「あ?」


両手をいっぱいに広げて。上目で見つめてくるこいつの意図がつかめない。なんだ、その腕。俺に何をしろってんだ?


「なんだよ」
「い、いいから…」
「何がだよ」
「っ…だーかーらー!!」


唇を噛んで眉間に皺を寄せたまま何も言わない姿は正直、焦れったい。理解出来なくて、次第に苛立ちが募る。


「っだから何だってんだよ!!」


もう我慢の限界でそう思いっきり叫ぶと、同時に胸に飛び込んでくるカイト。一瞬の出来事で、何が起こったのかわからなかった。


「っアホギャモン、伝われよ…ばーか」


そこでようやく理解する。嗚呼、こいつはただ単に抱き締められたかったのか、と。それを言わなくても俺に伝わると思ったから素直じゃないこいつは代わりに両手を広げていたのに、俺は全然気がつかなくて。


「…んな事言ったってわかるかよ、バカイト」


だから詫びとして、あといい機会だから思う存分こいつを抱き締めてやる。


「悪かったよ」
「…ん」


それから今度はちゃんと気付いてやるからと、耳元で囁いてやった。



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