説得力ナシ
「ギャモン、ナンプレ作ってー」


天才テラスにて。テーブルに山積みになった大量のパズルを目の前に、カイトが俺にそんな事を言ってきた。ここには俺ら二人しかいなくて、このパズルは他の連中が来るまでの退屈しのぎってわけだったのだが。


「んだよ、そこにあるパズルやりゃあいいじゃねぇか」
「全部解いたし」


どうやらこれだけでは足りなかったらしい。得意気に笑う目の前のこいつは俺のライバルで、だけどパズル関係の事意外は外見も性格も普通の女(馬鹿だけど)。そんなこいつが無邪気に笑いかけてくる理由なんて今みたいにパズル作れと要求する事以外全くないわけで。ノノハとはまた違った雰囲気のこいつを別に嫌っているわけでもない俺は、言われるがままにこいつの暇潰しの為にナンプレを作ってやるのだ(別に好きなわけではない)。


「しゃあねぇなあ…」


しかしスラスラと紙にペンを走らせる俺の真横で。じっとそれを見つめるカイトの顔の近さは一体何なんだ!?近いというかむしろくっつきそうなんだが。


「…なあ」
「ん?」
「少し…離れやがれ」


気になってしょうがねぇ、と付け足して横を向くと、間近にカイトの顔。目が合って、互いに数回瞬きさせて。


「(…うお、真っ赤)」


途端に真っ赤になる顔を見つめていると、ふるふると震えだすこいつの身体。


「…え、あ…っ」
「カイト…?」
「う、あ……っぎゃ、もん…!!」


しばらく見つめてたら混乱し出したのか、俺の名前を呼んで胸元にダイブしてきやがった。
…………ダイブ?え?


「な、あ…っ!!?」


ぎゅうっと服にしがみついてくるこいつに、皺が出来るじゃねぇかと文句も言えなくて。むしろ両手ががら空き状態なんだが。


「な、にやってんだてめぇはよ…!!?」
「ゃ、わかんな…っ」


おいいいい!!!!わかんねぇって何だよ!!


「と、とりあえず離れやがれ…っ!!」
「わ、わかって…っ!?」


一瞬離れて、離れた、が。また目が合った。
真っ赤な顔と、潤んだ目元……やべぇ何か可愛いんですけど。


「っくそったれぇぇぇぇ!!」
「うひゃあっ!!?」


そして今度は俺がこいつを胸元に抱きしめる。って何やってんだ俺ぇぇぇぇ!!!!せっかく離れたのに何してくれちゃってんだチクショウ!!しかも自分からとか!!


「(つか何コイツいい匂い)」


ふわりと鼻腔をくすぐる甘い匂い。ああシャンプーか、なんて思ってたら色々善からぬ煩悩が芽生えてきた。


「ギャモン…っ」


とりあえず深呼吸だ、まずは心を落ち着かせよう。
……と思った矢先だ。



ぎゅうっ



……なぜか、さっきよりも密着したような気がするのは気のせいか。いや元々抱きしめてんのは俺だからこれ以上密着する事はないはずなんだが。
…こいつ、俺の膝に乗ってきやがった。










「…えっと、これどういう状況?」
「アナが思うにぃ、二人はここでヤ「ってねぇ!!誤解だ!!」


そう言いながら未だにカイトを抱きしめ続けている俺にはまるで説得力などなかった。



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