終わるなんて言わないで
「臨也、勉強教えろ」



進路決定とかで忙しいこの季節。


寒い身体を震わせていると、シズちゃんがオレの真っ正面に来て言った。



「マジで留年やべぇ」



焦り顔が堪らなく愉快。


…じゃなくて、ほんとに危ないみたいだ。


眉根に皺を寄せて、落ち着かない様子。


頬に冷や汗まで流れてる。



「…どの教科?」
「全部」



………正直、シズちゃんがこんなに馬鹿だなんて思ってなかったけど。


テストまで一週間無いっていうのに。


やっぱり馬鹿だったんだね。


ていうか何、全部って。


ごめんシズちゃんほんと笑えるんだけど。


…いや、やっぱり笑えないや。



「シズちゃん君さ、今まで何やってきたのさ…」



やれやれ。


オレも暇じゃないんだけどな。


進路は決まってるとしてもやる事がたくさんあるのに。


他人の事なんて構ってるほど暇じゃない。


けど。


このままシズちゃんが卒業出来なかったら…。


それは嫌だな、うん。



「シズちゃん進学?就職?」
「どっちでもねぇ」
「え、まさかのフリーター?」
「…るせぇ」



まあシズちゃんらしいって言えばそうだけど。


とりあえず、まずは勉強だ。


卒業に関わるテストなんだもの、オレに出来る事はやろうじゃないか。



「高校生なんてもうすぐ終わるんだ、最後くらいは良い点採る」



意気込むシズちゃん。


そんな安易に採れると思ってるなら最初から採ればいいんだけどな。


一週間で高得点。


まあ、採れない事はないだろうけど。


もしもの時はオレがなんとかするとして。


今のところやる気はあるみたいだから、きっと大丈夫。


でもね、シズちゃん。


オレは思うんだ。


卒業に関わるテストで、学生最後のテスト。


分かってる、けど。



「…オレもオール100点満点目指そうかな」
「厭味かそれ」



出来るならまだ、オレは学生でいたい。


もう一年だけでいい。


卒業したらみんなバラバラになるんだ。


もちろんオレだって、シズちゃんだって。


分かってるから。


だからもう一年だけ。



「…シズちゃん」
「あ?」
「留年、しないでね」



別に会えないって事はないけれど。


それでもなんだか、心苦しいんだ。


卒業するのは一瞬の事。


だけど君と築いて来た時間は、一瞬じゃないから。


だからね、シズちゃん。










終わるなんて言わないで










(君のいない人生なんて、想像したくないよ)



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