きみは変わらない笑顔で
きっとオレはこの先もずっと、苦しいまんまなんだろうね。


シズちゃんの笑顔がオレに向けられる事なんて二度とない。


シズちゃんはきっと、今の幸せを実感し続けるんだ。


オレはそれを、ただ静かに眺めるだけ。


なんて虚しい事だろう。


こんな自分が嫌になる。



「別れた」



なのに君は、オレにそんな言葉を投げつける。


それを聞いたのはつい今の事。


君は顔色一つ変えないで、オレに言う。



「あいつ、俺の力の事、知らなかった」



オレ達二人しかいない教室に響く声。


はっきりと耳に届いた。



「…どういう事?」



平静を装うオレ。


表情が崩れたら終りだ。


きっと自分が自分でなくなってしまうから。



「昨日の帰りに絡まれてさ…そいつらぶん殴ったら怖がられた」



一般人なら必ず恐れるシズちゃんの力。


オレはその力に惹かれた。


彼女もその力を分かっていてシズちゃんに近付いた。


そう思っていたのに。


知らなかった、だって?


なにそれ。


あれだけ暴れまわってたのに。


あれだけ硝子を割ったりしてたのに。


シズちゃんの力を、知らなかった?


ふざけんな。



「知ってると思ってたんだけどな…」



どこか諦めたような表情をして。


溜め息を吐くシズちゃん。


それは悲しいからとかじゃなくて。


呆れたような、溜め息。



「…何、それ」



馬鹿じゃないの。


彼女も、シズちゃんも。


オレがこんなにも苦しんでいたというのに。


そんな理由で、簡単に別れられるわけ?


なんでそんなに悲しまずにいられるの?


シズちゃん、彼女の事好きだったんじゃないの?


もう、意味わかんないよ…。



「まあ仕方ねぇわな、悪いのは俺だし」



少しも悲しまないなんて。


シズちゃんらしくないよ。


なんでそんなに平気でいられるの?



「…っシズちゃんは、悪く、ないでしょ…」



そんな表情、君には似合わない。


苦しんで、苦しんで、顔を歪めて苦しめばいいのに。


泣いてさ、後悔とかしたらいいのに。


なんで、しないのさ。



ねぇ、シズちゃん。


オレ君がわかんないよ…。



「…なんで手前が泣くんだ、馬鹿」



あんなに嬉しそうに笑っていたのに。


あんなに幸せそうに笑っていたのに。



「知らない…っ」



そんな大して心にも残らないような人。


最初から、付き合わなければよかったじゃないか。


結局苦しむのは、オレの方だった。



「俺、やっぱ手前らといるほうがいいわ」



そんなこと言って。


また離れていくんじゃないの?


馬鹿。


シズちゃんの、馬鹿。



「だから泣くな、臨也」





残酷だね、君も。










きみは変わらない笑顔で










(そんな表情、オレの方が悲しくなるよ)



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