こんなの恋じゃないのに
早朝。


今日は早めに学校に来た。


きっとオレより早く来た人なんていないな。


なんて思ってたら。



「あれ、今日早いな」



下駄箱で靴を履き替えている最中に、背中越しに聞こえた声。



「まだ誰も来てねぇな…」
「え、あれ…シズちゃん?」



振り向くとシズちゃんだなんて、嘘だ。


なんでこんなに早いの?


君がいつも彼女と登校してるの知ってるから。


会いたくないし見たくないから早めに来たのに。


有り得ない。



「な、なんでこんなに早いの…?」
「ああ…あいつ迎えに行ったら今日休みでさ、仕方ねぇから一人で来た」



あいつ、とは彼女の事。


まさか迎えに行ってたなんて…。


もしかして親公認?


てかこんなに早い時間から行ってたの?


いつもギリギリで教室に来るくせに。


そんなに彼女といたいんだ。



「そうなんだ、お大事にね」



ああ、オレの馬鹿。


彼女の心配なんかしてないのに。


シズちゃんが喜ぶ顔がみたいから、そんな理由で。


言葉に何一つ心なんて込もってないのに。



「サンキュー、臨也」



口先からの嘘でこんなにも嬉しそうな顔をするなんて。


こんなにも幸せそうな顔をするなんて。


でもその笑顔は彼女の為に向けられたもの。


決してオレに向けられることなんて有り得ない。


優しい笑顔。


純粋で、何の混じりっ気のない笑顔。



…シズちゃんらしいや。



それ故に、オレの中で何かが壊れていく。


君にはきっと、分からないんだろうね。


こんなオレの気持ち。


届くわけないよ。










こんなの恋じゃないのに










(もう一緒にいたい、なんて思わないよ)



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -