どうしよう隠し切れない
シズちゃんに彼女が出来てから、シズちゃんは屋上に来なくなった。


昼食はいつもオレと新羅とドタチンの三人だけ。


一人減っただけで、こんなにもどこか虚しい。



「まさか、静雄に彼女が出来るなんてね」
「よくあんな根性ある子がいたもんだ」
「根は優しいからね、静雄は」
「彼女もそこが好きになったんだろうな」



何気無い会話と過ぎていく時間。


オレの心は崩壊したままだった。


人が好き。


だけど今はこんなにもシズちゃんの彼女に嫉妬してる。


シズちゃんの事も、大嫌い。


みんな嫌い、大嫌い。



「臨也も残念だろうね」
「…なにが」
「静雄との喧嘩がなくなって」



へらへらと笑う新羅に苛立つ。


何も分かってないくせに。



「…はっ、別に?逆に清々したよ、怪我もなくなったしね」



怪我。


シズちゃんがつけた、傷。


今はもう傷跡すらも残っていない。


オレの身体は、シズちゃんと出会う前の身体に戻っていた。


無傷、だなんて。


シズちゃんと喧嘩してからは有り得なかったのに。


今ではもう当たり前。



「ふーん…そういえばさ、静雄が言ってたんだよね」
「何をだ?」
「「臨也が彼女出来た事祝福してくれた」って、しかもすっごく嬉しそうに」



どきり。



「よっぽど嬉しかったんだろうな」



…なんだそれ。


確かにオレはあの時、祝福するとは言った。


けど心は込もってなかったよ。


それなのに。


そんな言葉一つが、嬉しかったの?


しかもオレの言葉なのに。


嫌いなんじゃないの?


オレのこと。



「奇想天外でね、びっくりしたよ」
「そんなにか?」
「うん、だって滅多にあんな表情しないよ、静雄は」



…どうしよう。



「お前でも初めて見たのか…意外だな」
「そうなんだよね〜写真撮っとけばよかったなあ、いらないけど、ねぇ臨也?」



…心は痛い、はずなんだけど。



「…臨也?」
「え、あ、そうだね…っ」



…嬉しい、かもしれない。










どうしよう隠し切れない










「門田君、いったい臨也はどうしたんだろうね?」
「さあ…」



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