不慮の事故から始まる恋
不慮の事故、っていうのはいつ起こるのかわかんないし突然起きるから不慮の事故っていうわけで。それは何が起きるのかなんて予測も出来ないから厄介なものである。


「わ、悪ぃ…」
「っ…」


それが今現在、俺が起こしてしまっているのは事実で。出来れば数分前に戻りたい。無理だけどさ。


「早くどけよ…っ」


ぐいぐいと身体を押してくる目の前のこいつは仙道で、ミソラ一中の番長で、だけど女の子で。そんなこいつを押し倒してしまっている状態である俺は今人生最大の危機に遭遇しているのである。


「(やべぇどうしよう…)」


心臓の鼓動がやけに速い。まあ女の子押し倒してんだからそうならないわけないんだが…相手が相手だ。まさか、こいつ相手にこんな気、あるわけないって思ってたのに。
長い睫毛と、今にも泣きそうな潤んだ瞳。紅潮した頬と、俺の身体によって左右に広げられた両脚。
…ああ、これはヤバい。


「…仙道」


なんか、よくわかんねぇけどこいつにキスしたくなる。キスなんかした事ないくせに、なんていうか…衝動?無性にこいつに触れたい。


「ごう、だ…?」


不安げに見上げてくる表情がたまらない。よく見ると結構可愛いんだよな、こいつ。ふわり、と頭を撫でてやるとピクン、と身体を強張らせる仙道。すでに抵抗すらなくなってて、視線が交わり暫し見つめ合う。


「…なあ、キスしていいか…?」


頭を撫でていた手をゆっくり頬に移動させて、親指で唇に触れる。仙道が一瞬口を結んだから嗚呼、やっぱ駄目か、なんて思ったけど…


「…すれ、ば」


いつもの調子とはほど遠く、緊張したように顔を背けてそう言ったから。


「…っ仙道」
「っん、…っ」


両の頬に手を添えて、唇を合わせた。合わせるだけで、時々離して、角度変えて何度も何度も合わせる。だけど、なんか物足りない。


「せんど、」
「ぇ…っん、あ」


だから名前呼んで、口を開いたその隙に見よう見まねで舌を差し込んでみる。柔らかい舌と唾液が混ざり合って、仙道の口の端からは唾液が垂れて。ああ、なんだこれ、すっげぇエロい気分になる。
キスするたびに仙道は身動いで、そのたびに太股とかが俺に擦れて。…ヤバい、勃つ。


「っ仙道、これ以上は…ヤバい、」


限界で、今すぐにトイレまで走りたい。だからこれ以上は駄目、って。それを伝えたくて言ったのに。


「…なん、で?」


物欲しそうに、寂しそうにそんな事言うから。…こいつの全部、欲しくなる。


「…勃った、から」
「え、」
「これ以上やると…お前をヤりかねねぇっていうか…我慢出来そうに無ぇ」


けどそこは我慢。漢なら、互いの了承も無くそんな事しちゃいけねぇ。


「…したら」


なのにこいつときたら。そんな俺の決心とかそういうの、簡単にへし折るんだよな。


「…っどうなっても知らねぇぞ」


もう半ばやけくそになって、また、唇を合わせてキスをする。今度は、名前呼ばなくても口を開いてくれた。



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