郷仙
「バカップルみたいな事したくねぇか?」


突然何を言い出すんだこの男は、なんて思いながらソファーに座ってコーヒーを啜る。先ほどから寒くて堪らないのだがこの半裸男は正気なのだろうか。


「はあ?」
「だから、バカップルみたいな事しようぜ?」
「真顔で冗談は流石にきついねぇ…」
「冗談じゃねぇし」


そう言って取り出したのは長い長い赤色のマフラー。


「相合マフラーしようぜ」
「語呂悪」
「気にすんな」


上機嫌でオレの首にそれを巻き付けたあと、隣に座り自分の首にも巻き付ける。…だが何かおかしい。


「…仙道、遠い」
「そら当たり前だろ」


こいつはやはり馬鹿だった。長いマフラーをそれぞれに巻き付けては意味が無い。仕方がないので、ため息を吐きながらマフラーを取る。


「あっ」
「いいから、オレが巻く」


案外ノリノリじゃないか、と内心思いながらも二人いっぺんにマフラーを首に巻く。思った以上に互いの顔が近くなったので、郷田から顔を背ける。


「仙道頭いいな」
「お前が馬鹿なだけだろう…」


俯いてたら背後から抱き締められる。背中から伝わる体温はとても温かい。


「このまま出掛けてぇなあ」
「流石にこのままじゃねぇ…」
「やっぱ駄目か…」
「…女装でもしてあげようかい?」
「!!?」


明日はクリスマスなんだし、たまにはいいかなって思いながら呟いた。


「ダイキ、大好きだ」


そう言って更に強く抱き締めてくるこいつの腕の中に大人しくおさまっているオレも、心底惚れてるんだと諦めるかの如く静かに背中を預けた。



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