崎龍♀
「君はもう少し、警戒心を持つべきだ」


やけに険しい表情で、だけど困惑した様子でそう言った山崎。けれどそんなこいつの顔はおれの真上、というか目の前にあって。
…簡単に言うと押し倒されてるわけなんだが。


「お前相手に警戒心持ってもなあ」
「…君は俺をなんだと思ってるんだ」


まあ、押し倒されてる現状は事実だし。山崎は男でおれは女だし。二人きりだし。警戒心持つのは当たり前なんだろうけど。


「井吹、俺は男だが今の君は女なんだぞ?」
「…うん」


けどなんだか…山崎ならいいかな、とか。むしろ山崎がいいな、とか思って。


「…なあ、」
「ん?」
「このままさ、続ければいいじゃん」


山崎の首に腕を回して抱き寄せて、キス出来そうな一歩手前で見つめる。驚いた表情をしたこいつは一瞬躊躇いながらおれの頭を撫でてきて。


「…俺が君を好きだと言ったら、君はどうする?」


そう言って聞いてくるから。


「…好きでもない奴に、こんな事させるわけないだろ?」


おれも好きだよ。そう言って笑ってやったらぎこちないキスをされて。心臓がぎゅ、って締め付けられるみたいな感覚に、おれも乙女思考になったな、って可笑しくなった。



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