とある猛暑の出来事
「あーつーいー!!!!」


豊満な胸元を惜しげもなく肌蹴させ、オレは扇風機の前にへばりつく。今日は、ここいらでは一番の暑さであろう。


「ちょ、銀さんちゃんと服着て下さい…」
「だって暑いんだもーん」


頬を膨らませ、オレはため息を吐く新八を見る。こいつの汗も相当なものだった。


「だからって、銀さんだって一応女性なんですから服くらいちゃんと着て下さい」
「…あれぇ新八くん、もしかして欲情しちゃった?」
「するかァァァァァァァ!!!!!!!!とにかく、服はちゃんと着て下さい!!」


新八の怒声で、余計に暑くなった気がする。これでは外の方がまだ涼しそうだ。隣で同じ様に扇風機にへばりついていた神楽に、新八に対しての嫌味も含めて呟く。


「神楽、新八には内緒で二人で甘味処行こうか」
「賛成アル、銀ちゃん大好き!!」
「それ若干僕に対しての嫌味ですよね」


なんやかんやで結局全員で行くことになったけれども、それはそれで良しとしよう。



***



「…あれぇ」


甘味処へ行くはずだったのに。

「…ちっ」


隣にいるのは神楽でも新八でもなく、


「なーんで土方君がここにいるのかな〜?」
「俺が知るかよ…」


真選組鬼の副長、土方十四郎だった。
何故オレがこいつと一緒にいるのかというと。甘味処に向かっていたオレ達は、偶然にも真選組と出くわしてしまった。そして神楽は沖田君と、新八はジミーとどこかへ行ってしまい、残ったのはオレと土方君。会えば必ず喧嘩だけど、今は呆気に取られてそんな気にもなれない。


「…オレにパフェ奢ってくれる気は?」
「無ぇな」
「…ですよね」


やれやれとため息を吐く。結局甘味処には、オレだけで行くとしましょうか。


「じゃーね、土方君」


ひらひらと手を振って、そのまま立ち去ろうとする。別に好きな人と一緒に行けるなんてことはあり得ないし、夢見てないから。


「待てよ」
「何?…って!!?」


なのに突然握られた手に、少しだけ焦る。心臓がゆっくりと激しく脈を打ち始めた。


「ちょ、何してんの?」
「奢る気はねぇが、奢らねぇとは言ってないだろ」


余裕な笑みで、ニヤリと微笑するこいつ。嗚呼、ったく…


「…なにそれ、屁理屈?」
「るせぇな…」


素直じゃないなと思いながら、オレは緩む頬を押さえながら黙って握られた手を握り返した。



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