明日の天気は 3Zは、俺の受け持つクラスだった。 このクラスの生徒はみんな個性的な奴ばかりで、先生を先生と思っていないような奴ばかりいた。 ゴリラ顔でストーキングな奴もいれば、そいつを容赦なく蹴り飛ばす女がいる。 また、見た目は女だが大食いで毒舌な奴がいれば、そいつに負けないくらい毒舌でドSなサド男もいた。 でもそんな奴らの中で唯一、目に止まった奴がいた。 土方十四郎。 こいつは見た目がかっこよく、結構モテるらしい。 風紀委員の癖にタバコを吸っているのか、少々煙りくさいが。 しかもそのため瞳孔が開いており、何にでもマヨネーズをかけて食う尋常ではない味覚を持っていた。 だから俺が以前、 「…土方君、間違えて犬の餌持ってきちゃったんだね、可哀想に…先生の弁当、分けてあげるから」 と言ったら、 「はあ?何言ってんだよ、先生。こんな美味いもん、誰が犬なんかにあげるかってんだ。てかあんたの弁当の方が、よっぽど犬の餌じゃねーか」 と真顔で返された。 「あのな、土方。生クリームは何にかけても美味いし、人間糖分とらないとこの先もたないよ?」 「そりゃあんたの味覚がおかしいからだ、つーか弁当に生クリームかけんじゃねーよ、食欲が失せる」 「んだとコラ、お前こそいちいちマヨネーズ一本全部弁当にかけて食うな」 「ぁあ?」 「んだよ」 視線が絡み合い、お互いに睨みあう。 俺は教卓から身を乗り出し、土方も椅子から立ち上がった。 周りは怯えたように…いや、訂正。 周りは面白そうに、俺達を見ていた。 「所詮どっちも、犬の餌でさァ」 その時どこからか、そんな声が聞こえてきた。 「んだとコラ、おい総悟」 「俺はただほんとのことを言っただけですぜ?」 沖田は鼻で笑いながら、呆れたように嘲笑った。 「てゆーかどっちも犬の餌以下アル」 今度は沖田の隣で弁当を食べている神楽が言う。 「お、チャイナ・・・たまには良い事言うじゃねーか」 「私はいっつも正しいことしか言わないネ」 二人は俺達を見下すように嘲笑い、馬鹿にした。 「テメーら・・・さっきからごちゃごちゃと・・・」 そう呻きながら土方は、拳を震わせて片手でマヨネーズを搾り出した。 「ヤベーぞ、チャイナ。土方さんがキレた」 「ほんとネ。瞳孔開いてるアル」 「瞳孔はもともとだぜィ」 特に怖がる様子も無く、二人は土方を見ていた。 「・・・あーもう、お前らその辺にしとけって」 …てなことがあった。 まあこれは日常だし、俺自身も楽しんでるから別にいいけど。 とまあ・・・こんな感じで俺と土方は気が合わない。 でも俺は、そんなあいつが好きなんだ。 生徒だけど。 つーかなんで男なんだ。 だから今現在進行形で、俺はそのことを考える為に校舎の屋上で空を眺めていた。 天気は快晴で、風も気持ちが良い。 今の俺とは正反対だ。 ギィ その時不意に、屋上の入り口付近から音がした。 今は放課後で、ここに来る奴は誰もいないはずなのに。 「・・・何しに来た?」 「探し物」 そう言って悠然と歩いてくる、俺のクラスの生徒。 そいつは貯水タンク付近に行くと、ハシゴを上った。 「あぶねーぞ」 「平気でさァ」 そう言っていとも簡単に上に上がった。 そして探し物とやらを、探す素振りを見せる。 「何探してんだ?」 「んー・・・土方さんのタバコ・・・あ、あった」 沖田はタバコの箱を手に取ると、ジャンプしてそこから飛び降りた。 「未成年は、煙草禁止だよ?」 「俺は吸わないですぜ、こんな煙いもん・・・」 そう言って、沖田は眉を顰めた。 「あ、そうそう。さっき土方さんが、あんたのこと探してましたぜィ」 「土方が?」 「ちょっくら呼んでくるんで・・・待っててくだせィ」 「はあ!?え、ちょ・・・沖田!!」 沖田は俺の話を聞かずに、そのまま走って屋上から去っていった。 「・・・なんだってんだよ」 そう呟くが、内心心臓が爆発しそうだった。 「(・・・でもまあ・・・いいか)」 けれど、俺はあいつが好きだから。 あいつが来たら、本当のことを言おうと思った。 このあとに、俺の気分がこの空のようになってほしいとは、別に思わないから。 だから言えるならそれだけで、俺はいいと思った。 そして数分後、錆びた扉が音を立てて開いた。 |