馬鹿と銃口 俺は馬鹿だ。大馬鹿だ。それは昔から理解している、だけれども。 「何してんだ…コラ」 銃口を自分の頭部に突きつけて、笑ってられるような奴ほど馬鹿ではない。 「気まぐれだ」 そう言って引き金を引こうともしない男は、泣く子も黙るヒットマンで。 こいつに自殺願望があるとしたら、それは興味本位とかそんなんでしかないはずだ。 「引けよ、引き金」 バーン、と口真似で言いながら、自分の指を銃口に見立てて頭部に突き立てる。しかし殺傷能力すら皆無に等しいので、俺は至って安全だ。 「嗚呼、お前を殺ってからな」 …前言撤回。俺は今、危険区域に入り立った。銃口は今、俺に向けられている。 「冗談じゃねーぜ、コラ」 諦めて降参のポーズ。本気で撃たれたら困るので、そうせざるを得ない。 「馬鹿な奴」 言いながら無邪気…いや、不適に笑うそいつに、俺が敵う日はきっと来ない。 「で、引くのか、コラ?」 今度は疑問系で問う。そしたらそいつは息を吐き出して、 「失せた」 と言って銃を胸にしまい込んだ。 「…あっそ」 多分その行動は、子供が玩具から興味を無くすそれと同じなんだろうけど。こいつはそんな可愛いもんじゃない。 「命拾いしたな」 こいつの気まぐれは、時に死人を出す可能性だってあるのだから。 「撃たれたって死なねぇし」 けれど俺だって、そんな簡単に殺される気はない。 舌を出して、再び銃口を自分の頭部に突き立てる素振りをする。 「知ってるさ」 お前馬鹿だもんな、って。わかってるけど。 でも笑って言うそいつも、十分馬鹿である。 馬鹿と銃口 (馬鹿二人!!) |