それが最後の、
「明日オレがいなくなるとしたら、お前はどうする?」


問い掛けた言葉はとても残酷だ。あながち間違いでもないのだから。日に日に表へ出たがるこいつは力を増していき、それを制御するオレではもうそうする事が困難になってきている。何かをきっかけに、その反動できっと彼は姿を現すだろう。それは避けられぬ事の出来ぬ運命だ。


「…それは、どういう意味でしょうか」
「難しく考えなくていい、そのままの意味で、だ」


訝しげに疑いの眼差しを向けてくる黒子は幸いオレの変化にまだ気付いていない。…まあ、緑間は薄々気付いているようだが。時折魅せるもうひとりの彼に戸惑いを感じている様子なのがバレバレだからな。本当に…悪い、とは思っているつもりだ。


「それは君が、この部活の主将ではなくなる、ということですか」
「いや、主将を辞めるつもりはないが…」


勿論彼も『オレ自身』である故、主将で在る事に変わりはない。ただそれが今までのオレと違い全くやり方が異なるだけだ。そしてそのやり方に、多大な問題があるだけで。


「…虹村主将方々先代から受け継いだものは、無くしてしまうかもしれないな」


きっとそれは呆気なく。彼は崩してしまうだろう、壊してしまうだろう。オレ達の『キセキ』は益々強くなる一方で、その力を止める術すら見出だせないままに。負ける事は許されないならば、勝ち続ければいいのだ。貪欲な程に勝利に飢えている。避けられない現状だ。そしてそれはもう始まっている。


「緑間は恐らく気付いているんだ」
「え?」
「だから…黒子、」


青峰同様、緑間も黄瀬も紫原も。彼等は徐々に確実に開花していっている。だが黒子、唯一お前だけがまだそうではないのなら。せめてもの気休めに、お前だけでも構わない。


「この先どんな事があったとしても、お前はバスケを好きでいろ」


それが酷く苦しく困難な道のりだとしても、きっとオレはそうだと信じている。お前なら、彼等が失ったものを取り戻す事が出来るはずだから。


「オレの目は、未来を見据える事が出来るんだ」


だから黒子、いずれその時がきて、全てが終わった時まで。


「…赤司、君?」


ボクは勝ち続けよう。全てに勝つボクは全て正しいのだ。だがきっとそれを覆すのは黒子、お前なんだろうから。


「黒子、」


好きだ、愛してる。お前という人間を、お前という存在を。だからきっと、お前は必ず成し遂げるだろう。


『赤司征十郎は二人いる』


恐らくこれから闇にのみ込まれるであろうボクを、どうかお前の手で。オレはずっと、お前がオレを連れ戻してくれると信じているから。



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