どうかこの手を、
熱いなあ、って思った。寒いなあ、とは思わない。ただ握られた手が、ポケットに突っ込まれた手だけに熱が籠る。嗚呼、頬も熱いかもしれない。


「やっぱ雪っつったらテツだよなー」


そうですね、と彼の言葉に賛同する。その通りなのだから否定する理由もない。息を吐くととても白かった。すると「寒いか?」という言葉が降ってくる。


「いえ、そんなに」
「そうか?ならいいけど」
「…どっちかというと、熱いんです、」


君の手。平均体温が高いのもあるけれど、それでも繋がれた手は自分の身体より遥かに熱をもっているから。


「テツの手すげー冷てぇけど」
「君の手が熱いんですよ」
「…離すか?」
「それは嫌です」


だってそうしたら寒いじゃないですか。君と手を繋いでいるからボクは寒くないんですよ、離したりなんかしたら寒くなるじゃないですか。それに…、


「離したりなんかしたら、見失うでしょう?」


街に呑み込まれてしまうから、きっと君はボクを捜してしまいます。傍にいるのに、捜されたくないんですよ、特に君には。


「あーそうだな、自信無ぇわ」
「…そこは嘘でもそんな事無いと言って欲しかったです」
「まー直ぐに見つけるけど」
「そうしてくれないと困ります」
「はは、けどもう見失ったりなんかしねーよ」


テツの事、もう離したりなんかしないから。その言葉と、よりいっそう強く握られる手に。それだけで泣きそうになるボクはきっともう君から離れられないんだと思います。


「…青峰君」
「あ?」
「大好きです」


君の傍にいるだけで、それだけでボクはこんなにも満たされるから。


「…俺も、テツが好きだ」


だからもう、この手を離さないで。



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