想い、半分こ
「室ちんの手、ちっさい」
「敦が大きすぎるんだよ」


ぴったりと手のひらを室ちんと合わせる。身体のでかい俺は当たり前に手も大きくて、室ちんの手とは比べものにならない。


「(赤ちんは、もっとちっさかったな)」


室ちんよりも小さな手。今でも鮮明に思い出せる、赤ちんの手。懐かしいな、なんて思ってたら室ちんに「敦?」と名前を呼ばれて我に返る。


「どうしたんだい?」
「べつにー」


会いたいな、とは思う。ちっさい赤ちんを抱き締めたいって思う。だけど、俺には室ちんがいるから。


「(お菓子みたいにいっぱい買えたらいいのに)」


二人は世界に一人ずつしかいない。どっちかを選べって言われたって、決めらんない。わかっているからこそ、余計に望むんだけどどうしようもない。仕方ないな、なんて思いながら室ちんを抱きしめる。


「…やっぱり変だよ?敦」
「うん、俺へんかも」


だってどっちも好きだから、仕方ねーじゃん。どっちも好きだから、どっちも欲しいし。あーあ、二人とも俺のもんになっちゃえばいいのに。


「痛いよ、敦」


腕に込める力に想いを半分、室ちんと赤ちんで半分こ。いつかひとつになるようにって、願いながら室ちんを抱きしめる。今度は赤ちんも、抱きしめられますように。



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