テスト一週間前の二人



ターン、ターン、ガシャン



中間テスト一週間前。部活の停止期間中にも関わらず、放課後の体育館からボールの音が響く。出入口からそっと中を覗くと、見覚えのある姿が。


「…青峰君?」


ユニフォームではなく制服のまま、彼はバスケットボールを手に持っていて。ゴール前でボールを構えて一人そこにいた。


「青峰君」
「ぅおっ!!テツ!?」


体育館に足を踏み入れ彼に近づき名前を呼ぶ。すると驚いたようにボールを構えたまま、一歩後退りした。


「びっくりすんだろ、気配消して来んなって」
「別に消したつもりはないんですけど…それより、何してるんですか」


部停中でしょう、と。そう言うと青峰君は目を泳がせながら頬を掻く。


「…だって身体動かしてねぇと落ち着かねーんだよ」
「バスケ馬鹿にも程がありますよ」
「うっせ」


きっとこのままでは彼のテストは散々な結果である事は目に見えている…ため息を吐いて、彼を見上げる。


「一緒に勉強しましょう」
「は?」


一瞬間を置いて。青峰君は数回目を瞬きさせたあと、ニッと笑ってボクの肩に腕を回した。


「何、テツが教えてくれんの?」
「わかる範囲でですが…てか重いですよ」


そう言っても腕を離さない青峰君は心底嬉しそうで。彼が上機嫌ならいいか、と結局彼に甘いボクは苦笑しながら首に回った腕に触れる。


「…こういうのって、なんかいいですね」
「誘ってんのか?」
「そういうつもりじゃないですけど、」


でも、なんか落ち着くんです。青峰君の手に触れたままそう呟いて、彼の身体に背を預けて身を委ねる。そしたら腹部に腕が回って、抱きしめられた。自分よりも幾分も逞しい腕に、心臓の鼓動が速くなる。


「…細ぇな、ちゃんと食ってんのかよ」


抱きしめられる腕に力がこもって。苦しい、けれど優しいのがわかるから。


「…食べてますよ、ちゃんと」


その手に触れて、指を絡める。青峰君の手が熱い。


「…なんか、勉強よりテツの方がいいな」
「何言ってんですか、困るのは君なんですよ?」
「そうだけどさー、」


まあ、とりあえずお前といれりゃあいいかな。そう言って青峰君は頬にちゅ、とキスをする。それがくすぐったくてもどかしくて。


「…勉強が優先ですけどね」


首を回して、彼の唇にそれを重ねた。










テスト一週間前の二人










「勉強だりぃ…」
「あんまり成績悪いと赤司君が怒りますよ」
「…それが一番だりぃわ」



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