お前だけ 「お前なんて嫌いだっ!!」 そう言いながら顔を真っ赤にして叫ぶ幼なじみは、俺を変態変態と連呼する。 「俺別に何もしてないんだけど」 「女たぶらかしといてよくそんな事言えるな…!!」 たぶらかす?誰を? 確かにナンパはしたけどたぶらかした覚えはない。全部スルーされたからな。 それを知ってか知らずか、それにしてもこの男鹿の態度には違和感がある。これはひょっとしてもしかするともしかして。 「…お前…嫉妬してんの?」 「はあっ!!?」 ボンッ、と爆発した顔はこれ以上ないほど真っ赤で。可愛いなあ、なんて思ったり。 「ちちちちち違うっ!!べべべべべ別にそんなんじゃ…っ!!」 動揺する姿も、全部全部が可愛くて。強気なこの子が俺の前だとこんな表情をするんだからたまらない。 「辰巳、安心しろ」 「ぅえっ!?」 勝手に緩む頬に、そのまま目を細めて微笑して。 「俺にはお前だけだよ」 俺はナンパの時は作り笑いだけど、お前の前じゃそれは出来ないんだ。だってほら、その証拠に俺にもお前の真っ赤が移ったみたいだから。 |