散華
後悔したつもりはなかった。ただ自分にとっての『唯一無二』はそれっきりだった。特定の人間と一緒になるつもりはなかった。腐れ縁、は仕方が無いと思った。あとにも先にも『夏油傑』という人間は自分にとってかけがえのない存在だったのだ、と気落ちするわけでもなく。けれど一生涯忘れる事のない存在なんだと、所詮『記憶』に成り下がってしまった親友にざまあみろと嘲笑う気力があるのかと問われればそうでもなく。ただ胸の内の、奥底に沈んだかのような気分で。募る想いもなく、募りきった想いがなくなる事もなく。ふと思い出せば懐かしくも儚い思い出だった、なんてのは綺麗事で。純粋な愛というものも無ければ恋慕を抱いたわけでもなかったはずなのに。こんなにも忘れ難い人間だったんだと。こんなにも、未だあの男が胸に燻り続けている事に安堵している自分がいて。

『悟』

それは確かに後悔だった。
それは確かに唯一無二だった。
それは確かに腐れ縁だった。
それは確かにかけがえのない人だった。
それは確かに、俺にとっての『夏油傑』という親友はあとにも先にもたったひとりのお前だけだったんだと。あの頃はお前が俺の全てで、それを突き放してしまったのも紛れもない俺で。今更どうしようも出来ない事を嘆いても仕方ないから、俺はお前を想い続けて手向けの華と共にお前を弔いたい。…もう逢えないお前となら、千年先くらいにはまた逢えるんだろうかなんてのは思い上がりだ。千年越しの恋慕なんて洒落になんねぇよ。



《拝啓君へ》



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