運命
もしもサッカーをしていなかったら、なんて考えた事はなくて。サッカーをするのが当たり前だったから、それ以外の選択肢なんて微塵も思いつかなくて。

『俺はもう、お前無しでは生きられない』

なんて事を言われた暁にそのまま付き合って、それが案外悪くなくて。サッカーをしてなければ出逢わなかったしこんな関係にもなっていなかったのに。…というか青い監獄に来ていなかったら、オレがストライカーじゃなかったら。一生テレビで観るような人間だったんだ、アイツは。

「(けど出逢っちゃったんだもんな)」

もうしょうがない、で済むような関係じゃなくなったんだけど。鬱陶しかった、ウザかったはずなのに。こうも適応能力が高いと吊り橋効果っていうやつ?いつの間にか互いの人生に不可欠な存在になっていて。自分だけを見て欲しくて、自分以外を見て欲しくなくて。それでも何度もゴールを奪い合った、アイツ以上に喰い合う人間なんかもういないってくらいに。きっとサッカーをしていなかったら出逢わなかっただろうカイザーに、今のオレは自分の人生全てを捧げてもいいって思ってしまっている。

「…なあ」
「なんだ?」
「責任とってくれよな、ダーリン」

互いに狂わされた人間同士、多分手遅れだろうから。



《運命を嘆く》



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