夢幻
デンジの声がする、と思い目を開けた。寝過ごしたのは久々だと身体を起こして頭を掻けば、気怠さに頭痛と吐き気に襲われる。昨日の夜、そんな飲んだっけか。なんて酔っ払いの記憶なんかあてにならない。もう一度目を閉じればもう起きないような気がして、それからゆっくりと床に足を降ろす。冷たい床に、いつもと変わらない感触のはずなのに懐かしいような気がして。変な感覚だと大して疑う事もなく立ち上がると無性に身体が怠くて頭痛がする。このまま吐き気に任せて床に全部ぶち撒けてしまえば楽になれるんだろうか。けど、ああ、でも。片腕だから、デンジにやらせる事になっちまうな。デンジに後始末押し付けて、それから俺はのうのうと楽になるんだ。

「(…楽に、なるのか)」

全部、任せて押し付けて。全部、俺の後始末をデンジに。全部任せて俺は、のうのうと。…死んで、遺されたやつの気持ちなんて痛いほど知ってるくせに。遺るのは空っぽの心か、俺の未練だ。悲しむなんて思ってないけれど。きっと、俺の『夢』はこの部屋を出てしまえば覚めてしまうんだろうから。



《夢と知りせば》



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