何をしよう? とんでもないことをしてしまった。こんなはずではなかったのに。いつものように、ノミ蟲を追いかけていて。気が付けばこんな状況。…いや、人は無意識に他人を押し倒しはしない。それもこれも、全てはこのノミ蟲が悪いのだ。 「…シズちゃんのえっち」 「!!?」 しかも場所が悪い。人気の無い路地裏とか、まあ大通りよりはマシだけどよ。 そして耳にガンガンと響く言葉。嗚呼、頭が痛い。 「…まぁつまずいたオレも悪いんだけどさ」 こんな状況になるなんて思わなかった、と。…それはこっちの台詞である。 「…畜生」 嗚呼、頭が痛い。早くこの状況から抜け出したい。しかし、 「シズちゃん退かないの?」 「…退いたら逃げんだろ」 こんなチャンスは滅多に無いのだ。一発でも構わない、とにかく目の前のこいつを殴っておかなくては。 「殴るの?」 「嗚呼」 「無防備なオレを押し倒して?」 「……」 ズキンズキンズキン、頭は痛くなる一方で。やはりこの状況からは抜け出せない。 「シズちゃんそういう趣味だったんだ」 「嗚呼クソ、黙れ」 ジッと睨みつけると、ノミ蟲は大人しくなる。初めからそうしてりゃよかったんだ。 「…シズちゃんのえっち」 「まだ言うか手前…」 顔を背けるノミ蟲は、不機嫌そうに頬を膨らます。不機嫌なのは俺だっての畜生。 「暴力嫌いだって言うくせにさ、矛盾してるよ」 「うるせぇ、手前は別なんだよ」 いらいらいら。額に青筋が浮かび、頭に血がのぼる。血管がブチ切れそうだ。 「別?特別だったら嬉しいねえ」 「手前はノミ蟲以外のなんでもねぇよ」 「オレにとってはシズちゃんは特別だけど?」 にやりと笑う怪しい笑みに堪らなく苛立つ。 「…うぜぇ」 「シズちゃんのえっち」 「…黙れ」 「ねえシズちゃん、」 いらいらいら、嗚呼腹が立つ。ズキンズキン、頭が痛ぇ。 ああ、畜生。 「オレと楽しい事しよう?」 早いとここの面殴ればよかったのに、俺の馬鹿野郎。 なんだこの状況早く抜け出したい、だなんて。 そんな願いは叶わなかった。 |