腕枕
「(あ、ヤバいかも…)」


今朝から身体がだるいとは思っていたが、まさかそれが酷くなるとは思わなかった。
授業を途中で抜け保険室までよろめきながらも歩くと、そこには誰もいない。


「(ベッドにだけでも…)」


ふらふらとした足取りでベッドまで近付く。
カーテンが閉まっている事に疑問を抱く事さえ出来なくて、そのままカーテンを開いた。


「あ?」


開けた瞬間不機嫌そうな顔と目が合う。


「…シズ、ちゃん?」


それは私の天敵シズちゃんで。
だけど限界だったからそのままベッドに倒れ込む。


「おい…手前、顔真っ赤だぞ」


そう言ってシズちゃんは私を抱えてポスン、と自分の身体の上に乗せる。
足元に避けてあった布団を掛けると、ポンポンと私の背中を撫でた。


「シズちゃん…」
「ん?」
「この体勢…しんどい」


シズちゃんの上に乗っかっているので、なんというか、今の自分には寝心地が悪い。
そしたらシズちゃんはそうか、と呟いて、私ごと身体を横に転がした。
そして所謂、腕枕。


「…腕枕、しなくていいよ?」
「俺がしたいんだよ、いいから手前は寝やがれ」
「…うつったらごめんね」
「馬鹿は風邪引かねぇって言ったの誰だよ」


シズちゃんの言葉にクスリと微笑しながら、私は彼の胸元に身を寄せて目を閉じる。


「おやすみ、シズちゃん」
「おう、おやすみ」


それから頭を撫でる手のひらに心地よさを感じながら、私は眠りについた。



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