どうしてこうなった
「シズちゃ〜ん!!」
「うおっ!?なっ…臨也!?」


大した事はないが、怪我をしたので新羅の家を訪ねた。
が、何を間違えたのか玄関から出てきたのは新羅ではなく臨也で、勢いよく飛び出した為か抱きついてきた。


「シズちゃんシズちゃんシズちゃんっ!!」
「は、え?」
「わー!!!!静雄ちょうどいいところに!!」
「は?」


ぎゅうぎゅうと抱きついて離れようとしない臨也の後ろから、今度は新羅が慌ただしく駆け寄ってきた。
なんだって今日はこんなに騒がしいんだ。


「おい新羅手前どういう事か説明しやがれ」
「うん、説明するからとりあえず中に入って!!」


新羅に促され、臨也を抱えながら部屋に入る。
嫌な予感がした。










「えっと、じゃあ説明するね」
「おう」


ソファーに座っても全く離れようとはしない臨也。
新羅からの手当ても終わったのだが未だに俺から離れようとはしない。
身体には抱きついていないのだが、今度は腕に抱きついていて身動きが取れない。
チラリと臨也を見ると、目が合った。
それから満面の笑みで「シズちゃん」と名前を呼ばれる。…どこのバカップルだよおい。


「…説明してもいいかな」
「あ?いいからさっさとしろよ」
「はいはい…えっとね、実は今臨也は、惚れ薬を服用しています」
「惚れ薬?」
「父さんの試作でね、使い道無くて困ってたところに臨也が来たんだ。で、内緒でお茶に混ぜてみたらあら不思議、イッキ飲みしてそのまま静雄の名前を連呼し始めちゃってさ」
「…馬鹿か。で、何で俺?」
「薬の効力は、飲んだ人にとってもっとも近い異性に対して起こるらしくてね。臨也の場合、私よりも静雄の方がそうだったって事」


だから僕には効かなかったんだよね〜と、新羅は人事のように笑う。
あ、ちょっとイラッときたぞ。


「臨也ったら薬飲んだ瞬間に静雄の名前連呼するし、更には会いに行くとか言って大変だったんだから」
「…」


ため息を吐いて、再び臨也に目をやる。
やっぱり離れなくて、機嫌良さげに俺の名を呟いていた。


「薬の効果はどんくらいで消えるんだ?」
「多分半日くらいじゃないかな?」
「…半日って」


今の時刻は決して早いとは言えない夕方の6時過ぎ。
今から12時間だとすると…


「新羅、俺はどうすりゃいいんだ」
「うん、多分臨也も離れないだろうし、今晩は特別に泊めてあげるよ」
「…悪ぃ」


とりあえず寝床を確保。
だが問題が無いわけではない。


「新羅、聞きたくねぇがまさか…」
「え?ああ勿論、一緒に寝てあげてね?ふふ…俺今夜はセルティと清い夜を過ごすから」
「意味わかんねぇ」


ガリガリと頭を掻いて、息を吐く。
なんだかとても疲れた。


「あー…風呂はいいや」
「汚いよ!!」
「るせぇ、この状態じゃ風呂にまでついてくるとか言いかねねぇだろ」
「いっそのこと一緒に入っちゃえばいいじゃないか」
「シズちゃんとお風呂入る〜」
「手前は死ね新羅、あと臨也、手前は黙っとけ」


ああクソもう駄目だ、寝る。
頭が痛くなってきたので、俺は臨也を抱えて寝室に向かう事にした。


「静雄」
「あ?」
「僕の家はラブホじゃないからそこんとこよろしくね?」


…嗚呼、余計頭痛が酷くなってきやがった。










どうしてこうなった










〜翌朝早朝7時頃〜


「(な、何で私シズちゃんと寝てるの!?何でシズちゃん私を抱き締めてるの!?てか何で腕枕!?いや寧ろここどこ!?)」


目の前の静雄の寝顔を見つめながら、早朝から混乱せざるを得ない臨也は赤面しながら身動きが出来きずにいた。



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