無自覚ですか
「シズちゃんあーん」
「…なんだその口は」
「シズちゃんのパンちょうだい?」
「誰がやるかボケ」
「うー…じゃあ私のパンと交換しよ?」
「…それならいい」
「やった!はい、シズちゃんあーん」
「ん…」





「君達さ、相思相愛なのはわかったから僕達がいる事をもっと意識して欲しいなあ」


自称恋人であるらしい、同居人に作ってもらったお弁当の玉子焼きを頬張りながら新羅が言った。


「あ?俺ら別にそんなんじゃねーし」
「そうだよ新羅、私とシズちゃんはそんな関係じゃないよ」
「いやいや君達が否定しても端から見ればそうに見えないからね?ほら、門田君なんて固まっちゃってるし」


若干無表情でストローをこれ以上吸えないという限界を超えパックが潰れていても未だに吸い続ける門田。焦点が合わずにぼんやりとしている。


「ドタチーン、大丈夫?」
「…」
「大丈夫じゃないみたいだね」


苦笑する新羅はやれやれといった様子で肩をすくめた。息を吐くと、今度は静雄が不意に立ち上がる。


「あれ、静雄どうしたの?」
「飲みもん買ってくる」
「あ、じゃあ私も行く〜♪」
「うぜー」


かと言って臨也を退ける事もなく、静雄は臨也と共に屋上から出て行った。そんな二人を眺めながら、新羅は空を仰ぐ。


「…なんかもう、どうでもいいや」


あははは、と笑っていると、その内門田が我に返る。


「…あれ、あいつらは?」
「二人とも仲良く飲み物買いに行ったよ」


門田にとって残酷な言葉を、新羅は平気で紡ぐ。再びフリーズする前に新羅は門田に笑顔を向けて、


「結婚式には呼んでもらおうね」


一人納得したように勝手に話を進め、とどめを刺した。



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