終われない、と呟いて
高校時代から付き合っていた彼女に別れを切り出された。

きっと生涯、これ以上に納得のいかない出来事はないだろう。

正直、俺は今の状況がよくわからない。

別れようと呟く臨也。

しかしその表情はどこか悲しそうで。

そんな臨也を抱き締めたい衝動に駆られるが、俺はそれをしなかった。



「…臨也」



脆く弱々しい肩は震え、いつもの調子とは全然違う。

今なら簡単に壊してしまえそうな臨也に、俺は手を伸ばした。



「…っ離して」



嫌がる素振りをしても、力の差は歴然としている。

振りほどくことが出来ない事に苛立ってか。

臨也は奥歯を噛み締めギッと俺を睨みつけた。

けれどもそれと同時に。

俺はこいつの唇に、触れるだけのキスをした。



「っ…」



震えをおさめるように、力加減をしながら手を握る。

俺を突き飛ばす事もせずに、臨也は瞑った瞳の目頭から涙を溢した。



「…なあ」



意味も無く泣くような奴ではない事を知っているから。

そんなこいつが泣く理由を、俺は訊く必要がある。

華奢な身体も、昔より長くなった髪も。

ムカつくような、ひねくれた性格も。

こいつの全てが、愛おしくて。

だからこそ、俺はこいつを手放したくない。

もう触れることも出来なくなるなんて。

俺はそんなの信じたくない。

否、望まない。



「手前はなんで、泣くんだ?」



頭を撫でると余計に泣いて。

鳴咽を溢しながら俺にしがみついて。

言っている事とやっている事が矛盾していて。

嫌だ嫌だと呟いて。

首を振りながら泣き叫んで。



「やだ…やだよシズちゃん…っ」



こいつの考えがわからなくて。

泣き続ける目の前の華奢な身体を抱き締めてもいいのだろうかと。

一瞬躊躇いながら黒髪に口付けた。



「好きだ」


流れる涙は止まらない。

壊さないように抱き締めた。

小さな身体は俺の腕の中にすっぽりとおさまる。

それでも泣き止まないから。










終われない、と呟いて










もう一度、



「好きだ」



と呟いた。





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