(トレ)←ジェイ
伝えそびれた言葉がまるで泡となって消えていく。繰り返し、繰り返しては募ることなく消えたそれの行く先は奥深い海の水底。沈んでは再び浮かび上がる事は無く、かといって後悔するでもなく。仕方がないと諦めてはまた新しい言葉を探すのだ。…言葉を探す。いつからかそれが楽しくて仕方がなくなって、どうせ伝える事などないのだと天に向かって言葉を紡いだ。ただ愛を囁くだけではつまらない、どうせなら歌に乗せて愛を囁こう。嗚呼、いつかの彼の歌が蘇る。自然と緩む頬に、満ちるのは己の心。水底に沈み消える言葉が、心に募って満ちていく。

「(滑稽ですね)」

地上に恋をした人魚の気持ちを理解しながら。消える言葉を紡ぎながら、愛を歌う。やがて自身も泡になる、そんな気がしてならなかった。



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