(夏)←五
笑ってた、自分が死ぬのがわかってて。学生時代のあの頃と何ら変わりない、それでもこの世界が嫌いなまま、アイツは笑ったのだ。オレのたったひとりの、唯一無二の親友。一生それは覆らない、たとえこの先誰が現れたとしても。関わった人間も、救った人間も、言い争った人間もどうでもいい人間も。全部全部がオレにとって傑ほど大事な人間になんてなったりしない。今でも鮮明に浮かぶ記憶、アイツと肩を並べたあの頃は。確かに存在した、最強の二人が過去の栄冠だったとしても。傑はずっと、オレの親友のままなのだ。…親友のまま、終わらせてしまったのだ。

「(今更、お前を想ったりするなんて滑稽だと思わないか、傑)」

夢に見る、魅せられる。それはまるで呪いのようで。脳裏に焼き付いて離れなかった後ろ姿、今際の際の惨状。オレがこの手で殺した、看取ったくせにだ。お前を想っては焦がれるオレを、笑うお前はどこにもいないのに。

「…好きだったんだよ、お前の事」

もう遅い、けど逢いたいよお前に。喪って気が付く、これが初恋だったんだ。



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